地域活動コーナー
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企業活動においてP2Mを実践していくために

中部P2M研究会 秦 光義 [プロフィール] :2月号

 近年、IT企業は新3Kとの認識が生まれ、IT企業従事者も自らそれを認め、労働集約型産業の様相を呈し、その一方では、P2Mのような将来への展望、企業像、従業員像を追い求める考え方も生まれ、変革の必要性が益々強くなってきていると感じています。
これらの動きを上手く融合させなければ、真の「変革」は生まれないと考えています。

 2008年にリーマンショック、2011年3月に東北大震災、更には円高、タイの洪水、ヨーロッパ経済危機が発生し、日本経済も大きな打撃を受けています。その結果、政治への不信、会社経営への不信・不安、将来への不安など、社会全般に強い「不安」「不信」感が蔓延。これが企業発展の大きな阻害要因になっているのは周知の考え方と思います。とは言っても、一方では「なんとか、現状を打開したい」との思いを抱く従業員も少なくないと感じています。
 この「不安」「不信」には、自らでは対処できないものには、それを前提に置きつつ、自ら対処すべきものには、組織的に払拭すべく活動が必要と感じています。

 震災後は、日本の強みとして、「危機に際しての規律」「真摯な取り組み」「他への思いやり」などが海外でも評価され、「絆」「今、私にできること」が復活へのキーワードとなっています。これらを念頭に置き、現在の事業の枠組みを超え、新たな価値、ビジネスモデル創生を狙うことができる企業組織作りに取り組んでいきたい。これがP2M活動の実践につながると考えています。

 企業を継続させ、成長させていくためには、「ビジョン(将来への展望)」「ミッション(使命)」「マーケティング(戦略)」「イノベーション(変革)」、それを支える「ガバナンス」「コミュニティ」が必要不可欠な要素と考えます。
ガバナンス :組織メンバーが中心となり、規律を重んじながら相互協力をすることで、目標に向けた意思の決定や合意形成を行いながら組織の円滑な運営を図ること。
コミュニティ:自己実現・自己意識・自己能力により創造性を発揮する場であり、組織の欠点を克服し、個人とチームとの結合を図ること。
このうち「ミッション」「マーケティング」「イノベーション」はP2Mの中核を成すもの。「ビジョン」「ガバナンス」「コミュニティ」は、中核活動を支える基盤としてそれに先立ち確立すべきものであり、前述の「不安」「不信」を払拭し「なんとか、現状を打開したい」との思いを実現するための環境として重要な位置づけになります。

 まず、第一にビジョンの合意形成。事業の目的は何か、どのような事業を目指すのか、どのような会社を目指すのか、どのような会社にしていきたいか、など従業員とともに議論し、合意形成することが重要。ビジョンには、経営のビジョンと個人のビジョン(自己の成長、自己実現)があり、双方の方向性を合わせる努力が必要。これが会社変革へのモチベーション向上への源泉となり、新たな価値創造、提供(イノベーション)を目指すことにつながるものと考えます。
 第二にガバナンスの基盤を構築。ここでは、個人の成長と自己実現、この結果、会社への貢献度が向上、会社と個人の成長ヘのスパイラルを目指すことができる組織の仕組創出が必要となります。このために重要なのは、自己実現への目標とその目標実現へ自己管理であると考えます。
 第三にコミュニティの基盤を確立。コミュニティには、内部コミュニティと外部コミュニティがあり、前述のガバナンスは内部コミュニティとして位置づけることができます。企業には各々強みと弱みが存在し、ビジネスが多様化している時代では、自社のみでは対応できないことも多く発生します。このために、外部コミュニティとして、自社の弱みを他社の強みで補うことが出来る他社との連携活動が必要となります。この趣旨に合意できる企業を募り、現在名古屋地区にて10社程度でVirtual Companyを立上げ、活動を開始しています。

 最後に、まだ本格的なP2M活動に至っていない状況ですが、今後はドラッカーのマネジメント論、ポーターの競争戦略論など、他の理論との融合も検討し、企業発展に貢献していきたいと考えています。

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