地域活動コーナー
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「アジャイルソフトウェア開発宣言とP2Mの関係について」

広島P2M倶楽部 石橋 伸介 [プロフィール] :3月号

 今回、PMAJのオンラインジャーナルに寄稿させていただく機会をいただき、悩んだあげく現在私がもっとも可能性を感じている、アジャイルソフトウェア開発とP2Mの関連性について書くこととした。ご存じない方の為に少し説明すると、アジャイルソフトウェア開発の始まりは2001年のアジャイルソフトウェア開発宣言(アメリカのユタ州で17名の開発者によって文書化された宣言)である。アジャイルとは単純に翻訳すると「機敏な」であり、1週間から4週間のリリースを繰り返し、プロジェクトを完了すると言うものであるが、その価値は4つの文章で簡潔に表現されている。この価値をP2Mの知識フレームに当てはめてみることにする。

プロセスやツールより人と人同士の相互作用を重視する。

 この価値は「プログラムマネジメントのコミュニティマネジメント」と理解した。プロセスやツールよりと言うのは、「内部の手続きにこだわることより」や「使えない購入ツールを無理やり利用するより」などといった意味であろう。

包括的なドキュメントより動作するソフトウェアを重視する。

 この価値は「個別マネジメントのスコープマネジメント」であろう。さすがにドキュメントなしと言うわけにはいかないが顧客にあまり重要でないドキュメントに工数を掛けるより動くソフトウェアに重点を置くという、プログラミングファーストの考えに基づくものだ。

契約上の交渉よりも顧客との協調を重視する。

 この価値は「個別マネジメントの関係性マネジメント」、とりわけ顧客との関係性について表現している。顧客以外のステークホルダーがいる場合とか、契約軽視の考えではないのだが、顧客満足なしにプロジェクトの成功はありえない

計画に従うことよりも変化に対応することを重視する。

 これが一番比較が難しい価値だと感じた。普通に考えれば「個別マネジメントのプロジェクト目標マネジメント」であるが、あえて「リスクマネジメント」と関係付けた。アジャイルの価値の中には、変更を積極的に受け入れる(ソフトウェアに限られると思う)価値があり、そうすることで顧客のビジネスリスクを軽減するという価値である。

 このように比較することで、それぞれの本質的な理解をより深めることが出来て、忘れかけていたP2Mも再確認することが出来た。アジャイル開発については、直感的に「良い」と感じていても、実際にプロジェクトに取り込むことは、現実的に難しいと感じておられるPM諸氏の方は多いのではないだろうか。P2M知識体系との比較により、全く別のものではなく、一つの手法であると考えることで導入ハードルが下がれば幸いである。また、あらためてP2Mの知識体系網羅性に感服する次第である。
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