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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~思い込みを変える力~

井上 多恵子 [プロフィール] :2月号

 「英語の発音がきれいなのは、あなたが帰国子女だからなのですね。」幾度となく、そう言われてきた。私自身も、知り合いの帰国子女たちの話す英語を聞いてそうだと思ってきた。しかし、一度も海外に住んだことがないにも関わらず、英語の発音がネイティブに近い人にここ数カ月間で3人も会ったことで、英語に関する私の見方は変わった。3人とも英語を仕事にしている方なので、一般の方より英語に対する取り組みが熱心だという事実はある。それにしても・・・堂々とした発音だ。「私の後に続けてリピートしてください。」と言って、自信を持って皆に発話をさせている。「どうやってそんなに発音が上手くなったのですか?」素朴な疑問を投げかけてみた。「リスニングをしながら、その通りに真似て、何度も繰り返す練習をしたからです。」なるほど!最近シャドーイングが英語学習ではやっている。英語が流れてきたらそのすぐ後を追いかけるように、自分も発話するというものだ。同時通訳者の訓練に使われている。皆さんもぜひやってみてほしい。発音やイントネーションやフレーズの区切りまでわかる。大量の英語を聞き流すのもいいが、少しの量でもじっくり聞きこむと、効果が高い。そこで、最初の思い込みの登場となる。
思い込みその1
「英語圏に小さい頃住んだことがないと、英語の発音がネイティブ並みにならない」
思い込みを変えるとどうなるか?
「思い込みその1の呪縛から解き放たれると、あなたの英語力が一気にレベルアップする可能性がある。」

 今日会社で、こんな思い込みを耳にした。
思い込みその2
「メガネをかけている人は、仕事ができる」
会話をしていた人は、「だから、自分はメガネをかけているのだ」と言っていた。これも本人がそう思っているだけかもしれない。少なくとも私は、「メガネをかけている人は、仕事ができる」とは思わない。ましてや、コンタクトレンズやレーシックが普通に使われている今日では!

 PMの世界ではどうだろう?例えば、一般的な仕事観を適用すると、こんな思い込みがありそうだ。
「WBSでアサインされたwork packageをすることは、大変だ」
 確かに、楽な仕事ばかりではない。しかし、一方で、どんな仕事に対しても、楽しそうに取り組んでいる人がいる。ということは
思い込みを変えるとどうなるか?
「大変だという思い込みから解き放たれると、職場に行くのが一気に楽しくなる可能性がある。」
「認知療法」をご存じだろうか。物事に対する見方をポジティブに変えていくことにより、ストレス耐性を高めよう、というものだ。「あ~あ~、めんどうだな・・・あんまりやりたくないな」と思いながらwork packageに取り組めば、面白くなるわけがない。やり方を工夫する、自分がいい仕事をすることでその成果物を使う人が喜んでいる顔を思い浮かべる、はたまた、仕事がしたくてもできない人に想いを寄せる、そんなことで、前のめりに取り組むことができれば、スパイラル的に楽しくなっていくかもしれない。先日NHKのクローズアップ現代で、ゲーミフィケーションということを取り上げていた。ゲームの手法をビジネスやスキルアップやモチベーション向上や何かの解決策を見出すことに使おうというものだ。今後、この手法は広がると見られているらしいが、今日現在では、まだ導入されていない勤務先が大半だろう。しかし、work packageをやる際に、自分自身の中でその要素を適用することはできる。

 この連載のテーマ「ダイバーシティー」の世界では、たくさんの思い込みが存在してきた。
思い込みその4
「ダイバーシティーは大変だ」
思い込みの背景
異なる背景や価値観を持った人たちが参加すると、あうんの呼吸が通じず、いちいち説明しないといけなくなり、工数が増える。
思い込みを変えるとどうなるか?
説明することで、曖昧だったことが明確になり、抜け漏れがなくなる。一体感が高まる。
これまで考え付かなかったようなアイデアが生まれる可能性がある。

思い込みその5
「優秀な女性が増えると、自分のポジションが脅かされる」
思い込みを変えるとどうなるか?
優秀な女性が組織の拡大に寄与してくれ、組織の競争力が高まり、給与が増え待遇も良くなり、新たなポジションが増える可能性がある。

 こんな単純な話ではないことは、百も承知している。しかし、たくさんの思い込みが存在していることを認識し、一つでも二つでも、思い込みを変えようと努力することで、よりいい状態が生まれるなら、トライする価値はありそうだ。というか、「思い込みを変えようと努力する」と書いていること自体が、私自身の思い込みのような気がしてきた。なぜ、そのプロセスが「努力」でないといけないのか?トライするプロセス自体を楽しいものにできる可能性はあるのではないか?思い込みを変える力を鍛える必要が私にはありそうだ。
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