協会理事コーナー
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餅つき

(株)荏原製作所 植木 庸幸: [プロフィール] :1月号

 オンラインジャーナルから、随想執筆の依頼があったのが10月末だか11月初めだったか。丁度そのころ忙しくしていて断り忘れていた。私は勿論物書きでは無いので、人様に読んで頂けるような随想など書いたことも無いし書ける筈がない。しかし、光藤理事長にはお世話になったし・・・、どうすれば上手く断れるだろう。というのが本音。まあ、返事もしていないのだからあきらめてくれるだろうと高を括っていたら、確認も無い儘に締切日が連絡されて来た。12月25日(日曜日)とのこと。クリスマスプレゼントでもあるまいし、やれやれ。 最近のe-mailコミュニケーションは、先方の都合にあまり気を廻さない。読んでいるのが当然。たとえccであっても、送られてきた内容に同意できなければその旨、即、連絡しなければならない。返信がなければ相手は了解を取り付けたと解釈する。確かに業務連絡で私自身がやっていることだなと自嘲気味に納得した。そして、今日はその25日。
 一昨日の23日、我が家で餅つきをした。今年で3年目の素人餅つきである。例年師走の10日前後の週末にやっていたが、今年は年末近くにずれ込んでクリスマスイブと連ちゃんになってしまった。今、パーティー疲れの霧の掛った頭でPCに向かっている。
 私は横浜に住んでいるが、自宅の狭い庭に20人程集まってくれる。主力メンバーは息子の地元の友人達で、20代から30代の若者である。それに私の高校時代からの友人や会社の同僚が加わる。息子の友人達は、皆近くに住んでいるようだが職業は様々である。商店街の居酒屋の息子、親父の後を継いだ不動産や、植木屋の次男坊。小学校の先生。サッカーのトレーナー。私の様なサラリーマンも居るが、時代を反映してかITベンチャー勤めが多い。毎年、一斗(十升)搗く。八臼ぐらい搗くことになる。餅米を手配し、前日研いで水に浸けておくのは我が家の仕事。これは冬場の冷たい水で結構きついアサインメントである。一方、石臼と杵、蒸篭、竃、プロパンガスの燃料等の道具類はレンタルである。当日玄関先に届けてくれるお手軽さが良い。何事も商売で、このレンタル屋さんは時期になると電話をくれて予約を取ってくれる。朝一番に駆け付けてくれるのは私の高校の友人である。とかくシニアはせっかちで時間を守る。今流の若者達はのんびり昼前に集まって来る。それでも彼らは結構楽しみにしてくれているようで、一生懸命餅を搗いてくれる。彼らこそが戦力である。3年目にもなると、自然と持ち場が決まって来て面白い。一人は竃の前で専門家の顔をして餅米の蒸れ具合を監視する。一人は、臼の横で餅の搗き方を仕切っている。搗きたての餅は女性陣が丸餅にしたり、伸したりと素早く手を動かしてくれる。彼女達はワイフやガールフレンド達である。子供達は善哉や、黄粉で搗き立ての餅を食べるのに夢中。それぞれに自分の持ち場に分かれて作業が進む。私や友人は、時々偉そうに全体工程に指示を出す。勿論酒を片手に! P2Mとはこれか? 無事餅が搗き上がっても、老若男女話が弾んで、酒盛りが夜中まで続くのが毎年の恒例である。ご近所様申し訳ありません。
 最近は地域コミュニティーの意識が希薄である。私が住む街でも、どの家に子供が居るのか、お年寄りはいらっしゃるのか、障害のある方が居るのかなど殆ど知らない。寧ろその気楽さを享受している面もある。しかし反面、地域への無関心さが地域のセキュリティーの悪化、教育・道徳意識の低下や環境問題への無配慮などに結び付いて自分に跳ね返ってくるのかもしれない。かといって、サラリーマン生活を続けている間はなかなか身近なコミュニティーにも関われないと半ばあきらめていた。息子に話を持ちかけて始まった餅つきは、以外にも地元の若者が乗ってくれた。多くがマンション住まいで、コンビニの便利さに慣れ切った若者達であるが、米を搗いて自ら餅を作ることに嬉々として汗を流す。最寄りの私鉄の駅で、餅つきに来てくれた女の子に「おはようございます。」と声を掛けられたのは素直に嬉しかった。
 二年で定年になる。これから地元を楽しんでみようと思う。
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