グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第58回)
2012年に向けて

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :1月号

 2011年暮れも押し詰まってこの原稿を書いている。昨年まで十数年間、この頃、恒例であった協会代表としての、新年年頭の挨拶を書いていたのが、はるか昔のことのように感じる。
 2011年の私の出来事トップ・ファイブは次のとおりであった。
プロジェクトマネジメント協会代表引退
PMAJで5年、前身のJPMFで4年の代表、そしてJPMFでCOO役5年と、常にプロジェクトマネジメント協会の前線にいたが、思いのとおり引退することができた。体力、気力、判断力、瞬発力を失いつつある代表を抱くほど危険なことはない。よかった、が実感である。
ウクライナ財務大臣来日、大臣顧問として活動
ウクライナ財務大臣Fedir Yaroshenko氏が2月に来日し、大臣の国際顧問として日本で、大臣を補佐しての活動を行うという特殊な経験をした。最大の成果は、当時我が国の財務大臣であった野田佳彦現首相を訪問し、Yaroshennko大臣から、ウクライナの財政再建や新経済成長はP2Mの教えを基盤として推進していると言明していただいたことであった。
フランス大学院での最終P2M講義
フランスのグランゼコールSKEMA Business School (旧ESC Lille)で2005年から担当してきた7月恒例のP2M講義を、今年は最多の53名の修士課程生・博士課程生の受講を得て無事終えることができた。同学は昨年中盤に経営陣が一新し、カリキュラムも大きく変わり、外国人の教員は代替者がいない一部のポジションを除いては解任となり、この講義がP2M講義の最終回となった。P2Mは仕組み作りを説いているが、この講義の存在はまさに仕組みあってのことで、仕組みが完全に崩壊したら、全く別の世界となった、ということである。
フランス家族旅行
2月に妻と三女とともに念願のフランス家族旅行を実現することができた。パリ、リールと私の教員としての縁ができた都市と、ドーバー海峡の町カレイをのんびり訪れることができた。パリでは、ちょうど、PMAJでもお馴染みのLynn Crawford 教授がSKEMAで講義中であったので、挨拶も兼ねて家族を連れてパリ北部のLa Villetteキャンパスを訪れた。その記念写真は7月に講義で訪れた際に廊下に貼ってあったが、Crawford教授も同学にもういないし(元々オーストラリアのBond University教授)、そもそもLa Villetteキャンパス自体が今月閉鎖され、別の前身グランゼコールのパリキャンパスに統合された。
不調
今年は体調が悪く、かなり苦しんだ。これまで入院9回、手術6回の経験があるが、それ以外は極めて元気が取柄であったが、4月から6月くらいは、週にまともに働けるのが半分くらいという不調に悩まされた。しかし、この状態から気力を振り絞って抜け出し、10月末にはボディーのポンコツ状態は相変わらずであるが、ちゃんと走行できるようになった。

 不調から抜け出る課程で、まず、気持ちの支えとなったのは慶應大学大学院での特別プログラムで協力教員を務めながら同プログラムが目指す新たなる融合教育の形成に努力することで気力を回復したこと、次に「芸は身を助ける」の喩の通り、(日本語の)たった1ページの文章すら書けない状態から、社業で30年間常用語であった英語で、期限が迫っていたウクライナで出版する書籍の担当分の原稿を書かざるを得ず、あがいているうちに集中力が回復してきたこと、そしてウクライナのパートナー達からの毎週のウ国訪問の催促であった。また、第2スーパーバイザーとして研究指導をしている博士課程の数名の学生達からの、田中さん、休んでいる場合ではないですよ、との警告のメッセージであった。  悟ったことは、齢68歳にあっても、自分のように日本人として少々変わった経歴を有する者は、選択肢としては、引退であれば完全に引退(そのためにはフェーズアウト期間が2年程度必要)、そうでなければ、体力の続く限り頑張る、のいずれかで、中間は無い、ということであった。
 後者を選んだ私は、社会人第3ステージ突入を宣言し、2012年正月明けから全速で走ることになった。
 1月には、半年遅れで、ウクライナでイノベーション・プログラムマネジメントのマスタークラスを、政府高官向けを主体に4ラウンド(各2日)開催する。そして帰国後数日をおいて、PMAJが経済産業省直轄の(財)海外技術者研修協会から受託した(企画の段階から協力)、我が国のインフラ戦略輸出における仕向国側協力人材向けの2週間のP2M研修のコースディレクターとしての任務が待っている。この研修には13カ国から30数名が参加する。はるばるアフリカのガーナや南米のペルーやパラグアイからもP2Mを学びに来てくれる。
 4月からは、いくつかの大学院で新規に4科目から6科目程度の講義を引き受けている。
半分は海外からの学生で、その多くは発展途上国からの学生で猛烈に勉強している。
 日本が半分茹でガエル状態にあるなかで、「発展途上」というのはいまや大変な価値がある。
 次号は、久しぶりのウクライナ・リポートをお届けしたい。  ♥♥♥♥♥

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