理事長コーナー
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タテ・ヨコ社会とPM

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :12月号

 当協会が協力している東北大学の高度イノベーション博士人材育成センターの“高度技術経営塾”の設立企画に深く関与し、設立後も塾長として5期5年間務められた渡辺幸男氏のお話を伺った。

 高度の専門知識を持ちつつもコミュニケーション力が充分でなく、多彩な人材との人間関係の作法を学ぶ研修を受ける機会は、通常大学院にはない。 そのため折角身につけた高度専門知識も充分に活きてこないことが多い。 博士課程修了の学生を採用しづらい大きな理由の一つとして、このことが受入企業側から問題提起されていた。 高度技術経営塾は、机上の知識教育(ビジネス基礎知識)に加え、他専門分野の大学院生との疑似共同体験を一年間過ごすことで、“人間力と実務応用力”をつける実践的な講座である。 想定していた成果が出ていること、さらに、当協会がその一部であるプロジェクトマネジメント(PM)講座で貢献していると伺い、大変嬉しく思った次第である。

 1967年に出版され、現在に至るまで多くの読者を惹きつけている中根千枝氏の名著「タテ社会の人間関係」は、所属機関、職業集団、地域などの「場」から構成されるタテ社会に日本人の行動規範は拘束されていると説明している。 PM手法が生まれた西欧社会は、共通要素の構成員からなる「資格」社会であり、「ヨコ社会」である。 博士課程修了後まもなく、多くの高度技術専門家が働く研究開発の現場では、専門家からなるプロジェクトチームのリーダーとして期待されている。 PMは、縦割り専門家群を効果的に活かし、横断的な横串組織で、技術の壁、組織の壁、先入観などの心の壁を越え、特定のミッションを達成する手法であるため、PM講座が実務遂行上効果的であったのだと思う。

 日本の高度成長期は、アベグレンの指摘した日本企業の持つ三点セット(終身雇用、年功序列、企業内組合)を備えたタテ社会が従業員のモチベーション向上や成果に大きく貢献したと云われてきた。 しかし、グローバル化が急速に広がり、新興国の低賃金労働市場が開放されつつある状況では、ヨコ社会の要件が有利となりつつある。 高度技術経営塾で巣立った方々が、その専門知識を伸長させ、更に、人間力とPMを含む実務応用力を活かして日本の競争力の源泉となることを期待している。
以 上
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