法人会員様コーナー
先号   次号

幸福の増進を追及して定年

(株)荏原製作所 鈴木 良治: [プロフィール] :12月号

 PMAJジャーナル編集長から、随想とは「思いつくまま、おりにふれて感じたことを書きとめた文章(広辞苑)」という言葉を頂きましたので、執筆をさせて頂くことにしました。
 2011年の日本で一番インパクトのあった出来事は、3月11日の東日本大震災(M9.0)と福島原発事故でした。まずは亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。一方2011年の私に取って、一番の出来事は4月に60歳を迎えて、7月末での定年退職でした。会社人生には定年があることは理解していましたが、自分がその立場に立った今、様々な思いが頭の中を駆け巡っています。
<株式会社荏原製作所(EBR)に勤務して>
 1975年に株式会社荏原製作所(以下EBRと略す)の当時子会社であった荏原ユージライト株式会社(以下EUと略す)に入社した時は、第二次オイルショックで採用取り消しや自宅待機が多かった時代でした。本来の入社日から二ヵ月後の6月になってEUに出社してからは、EUの本業とは少し業務内容が異なる環境分析・計量証明事業に従事し、霞ヶ浦調査や別府湾調査などを経験しました。その後当時の経営判断で部署が無くなり、親会社のEBRに移籍し、また機械メーカーとしては異例の電子ビーム排煙処理装置に関する開発、プロセス設計、試運転業務で、アメリカ、ドイツ、中国へ行かせてもらいました。
 EBRは、1912年(大正元年) ゐのくち式機械事務所を創設し、畠山一清が所長に就任したのが創業とされていますから、来年で100周年を迎えます。創業の精神は「熱と誠」、企業理念は「水と空気と環境の分野で、優れた技術と最良のサービスを提供することにより、広く社会に貢献する」です。創業当時の社史を紐解くと、大正、昭和のロマンと戦争時代に、熱血漢の畠山一清が今の荏原グループの基礎を築いたことが記されています。就業規則にも、従業員の本分に関しては、「従業員は、協調、友愛の精神と溌刺(はつらつ)たる創意をもって社業の健全な発展と自己の幸福の増進のため、行動基準を遵守し、会社の社会的使命を自覚してその職責を遂行するものとする。」と記載されています。特に「自己の幸福の増進のため」という言葉は自分にとって印象的でした。従業員の幸福を就業規則に明記しているEBRという会社に勤務し、定年を迎えられたことに感謝しています。
<幸福とは>
 それでは、これまでの会社人生は「幸福を増進できたか」という問いを自分にした時に、素直に「増進できた」と答えられるかと言うと、ちょっとためらいます。会社人生は自宅待機からスタートし、殆どの勤務期間が残業の連続、与えられた業務が儲からないという理由で二度も部署が閉鎖を経験・・・と、上手く行かなかった苦い事の方が多く思い出されます。
 OECD(経済協力開発機構 (注) )が幸福度を住居、収入、雇用など11項目で評価していますが、日本は、参加34カ国中、19位という事を聞きました。日本人は先進国のはずなのに、GDPも高いはずなのに、収入や生活への満足度が低いそうです。一方最近ブータン国王夫妻が来日して注目を集めましたが、世界で一番幸福感を持っている国がブータンだそうです。ブータン国王夫妻が新婚だから幸福なのは分かりますが、インドと中国に挟まれた小さな国であるブータン国民の殆どが幸福感を持っているというのは素晴らしい事です。結局幸福とはそれぞれの人が「幸せ」と感じることだと最近思うようになりました。
<PMAJとの関り>
 PMシンポジウム2003に、初めて当日ボランティアをさせて頂き、それ以来PMAJ(当時はJPMF)と関わってきました。土曜日に実施されていたPMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)の講習会に参加し、またPMシンポジウムの広報、企画などのボランティアスタッフとして、年末からゴールデンウイークの頃まで、夜遅くの会議と宴会に新橋まで足を運びました。ボランティアのメンバーはみんな生き生きとしています。色々な組織に所属し、役職も多彩ですが、PMシンポジウムを成功させようという思いは共通でした。その流れとして、新理事長の光藤様のバックアップもあり、EBR所属のPMAJ理事にさせて頂きました。PMAJでの活動でたくさんの充実感(ある意味での幸福感)を味わいましたが今年からは、私が定年のため植木さんにPMAJ理事を引き継ぎました。
<定年を迎えて>
 現在EBRを定年退職しましたが、幸か不幸か年金を満額もらえるのは65歳からのため、成り行きでこれまでの職場に勤務しています。定年前に描いていたイメージは、もっとゆったりした時間があり、体力が残っているうちに趣味の旅行やゴルフを楽しんで、孫の成長を見守りながら過ごすという人生でした。現実は、イメージ通りでは無く、給与が大幅にダウンしてもフルタイムの勤務時間で暇も無く、趣味の旅行やゴルフは経済上の制約があります。しかし、幸い私生活では二人の子供に恵まれて独立し、長女に出来た孫は男の子二人で近くにいます。最近は、「人生に思い通りという道は無い」という言葉を噛みしめ、「幸福とは幸せと感じることである」と自分に言い聞かせて今後の人生を楽しみたいと思っています。
参考:
(注) 経済協力開発機構、英: Organization for Economic Co-operation and Development, OECD
国民の幸福度を測定する11項目の「より良い暮らし指標」参加国の結果詳細:  こちら

ページトップに戻る