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リスクベースド・アプローチの実践:基幹システム再構築プロジェクト

河合 一夫 [プロフィール]
 URL: こちら  Email: こちら :12月号

 今回からリスクベース・アプローチの実践例として、ある中堅企業の基幹システム再構築プロジェクトを例に説明をしたいと思います。
 リスクベース・アプローチは、スコープマネジメント、タイムマネジメント、コストマネジメント、品質マネジメントといったプロジェクトの各局面においてリスクを特定し、その対応を管理するマネジメント手法です。以下に示す図は、リスクマネジメントと他のマネジメントの関係を示したものです。
リスクペース・アプローチにおけるマネジメント

 統合マネジメントは、スコープマネジメント等の各マネジメントの相互依存を調整しプロジェクトの目標を達成するためのマネジメントであり、リスクマネジメントはプロジェクトの目標達成を阻害する要因を取り除くマネジメントです。2つのマネジメントが車の両輪のごとく機能することでプロジェクトは目標を達成することが可能になります。リスクベース・アプローチをシステム開発プロジェクトに適用することでプロジェクト目標に対する阻害要因を早期に取り除き(もしくは回避)、プロジェクト目標の達成確率を上げることができます。
 今回の事例である基幹システムに伴う代表的なリスクを考えてみます。
(1) 業務要件(ユーザニーズ)を満たさない機能仕様
(2) システム完成期日の遅れ
(3) プロジェクト予算の大幅超過
(4) システムの信頼性の欠如、性能の未達成
 リスクはPMBOKの定義によると「リスクとは、もしそれが発生すれば、少なくとも1つのプロジェクト目標に影響を与える不確実な事象あるいは状態のこと」となっています。従って、リスクは別のリスクの引き金(原因)となります。その様子を次の図に示します。

 上に示した4つのリスクは、システム開発の目標(QCD)に対するリスクです。これらのリスクが顕在化しないようにするためには、それらのリスクにつながるリスクを顕在化させないようにするマネジメントが必要です。リスクベース・アプローチは、これを実施するためのマネジメント手法です。次回は、本事例である基幹システムの再構築プロジェクトについて説明をします。
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