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リスクベースド・アプローチの実践:「リスクの見える化」 (5)

河合 一夫 [プロフィール]
 URL: こちら  Email: こちら :11月号

 前回は、リスクシナリオについて説明しました。今回は、リスクの形式な記述を支援するリスクメタ言語について説明します。リスクマネジメントで重要なことの一つに特定したリスクへの認識を共有することがあげられます。リスクをマネジメントするために必要となる情報を過不足なく記述するための構造化された記述方法が必要となります。構造化されたリスクの記述方法を「リスクメタ言語」と呼びます。
 本連載で紹介しているリスクマネジメント手法の概要を以下の図に示します。この図は、モデル、(リスク)シナリオ、シナリオマップ、リスクメタ言語の4要素を利用してリスクを特定し分析するプロセスを繰り返すことを示しています。リスクはこの繰り返しの中でマネジメントの対象として洗練されることになります。

 リスクメタ言語は、構造化されたリスクの記述方法であると述べました。本稿では、リスクは事象の連なりであり時系列で発生する事象に対して、以下の図に示すように、原因、要因、(リスク)事象の3つの要素を持つモデルとします。シナリオは事象列を切り出して記述したものです。それらの事象列を決められた形で記述する方法を提供するものがリスクメタ言語になります。


 以下に、リスクメタ言語の記述フォーマットを示します。ここで、影響は損失量(コスト)に変換可能であることが重要です。
リスクメタ言語の記述フォーマット

 例として、サプライチェーンに関する次のシナリオで考えてみます。
シナリオ例:雪道で路面が凍結している時、トラックのタイヤがスリップをして商品が配送できない。
 このシナリオをリスクメタ言語で記述すると以下のようになります。シナリオでは、不明確な部分を明確に記述できるようになります。
原因:急ブレーキ、(路面凍結)
要因:タイヤがスリップする
事象: 事故が発生する
影響:商品の配送ができない
損失量:XX万円(トラックが配送する商品の価格)
 今回は、リスクメタ言語について簡単ですが説明しました。次回からは、リスクベースド・アプローチを実際のプロジェクトでどのように利用するのか、ケースを用いて説明をしたいと思います。
(以上)
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