地域活動コーナー
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東北の復興に向けたP2Mへの期待

P2M東北地区代表幹事 川口 莊太郎 [プロフィール] :11月号

 東北地区のP2M研究会活動は、いまだ東京や大阪、中部、広島、九州などの地区のように活発に活動を行い成果を上げている水準にはなく、他の地区からは大きな遅れをとっています。唯一、P2Mの活動と言えば、2008年7月と2010年10月に東北地区P2Mセミナーを二度開催したときに東北在住スタッフとしてお手伝いさせていただいたり、同会場でP2Mの1資格であるPMC(プロジェクトマネジメント・コーディネータ)資格試験開催を何回かサポートしただけの寂しい活動状況でした。
 一方、東北と言えば、農業や漁業が盛んな地域であることは全国的にも有名なことと思いますが、逆に電力や地方銀行などを除けば地場産業は決して多くはなく、企業の多くが大企業の支社や営業所であるという特色を持っています。そのような背景もあって、プロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントの普及という点でも他の地域に比べて遅れた状況にありました。
 そのような中、二度目の東北地区P2Mセミナーを契機に、昨年(2010年)暮れから東北地区でのP2M研究会を立ち上げるべく、PMAJ会員の方などと何度か会話をする機会を持つことができました。いよいよ本年の4月から東北地区で研究会を立ち上げ、具体的な活動に取り組んで行こうと決意した矢先でした。3月11日14時46分、あの大震災が東北地区から広く関東地区に至る地域を襲いました。その後に襲った大津波と合わせて、多くの人の尊い命と生活を奪い去って行きました。さらに、その後明らかになった福島原発事故では、今もなお多くの人が放射能汚染の恐怖にさらされながら生活を送っています。
 未曽有の大震災から7ヶ月以上が過ぎ、東北の人々は全国や世界の人々からの支援を受けながら、必死に復旧・復興活動に当たり、臨海地域を除いて都市部・内陸部などでは元の生活を取り戻しつつあります。宮城県仙台市に本社を置く弊社でも今回の震災で少なからず資産を失いましたが、弊社は恵まれていた方でしょう、全国の関連会社などからの多くの支援もあって数ヶ月後に復旧しました。
 しかし、弊社のある宮城県では、警察庁の調べで死者9,203人、行方不明者4,613人(2011年7月6日現在)、内閣府の調べでは避難者数14,265名、避難所312箇所(2011年6月30日現在)、住宅・建物の(全壊+半壊)数は119,238戸と報告されています。また、震災による企業倒産は209社、その負債額は32,866百万円に上るとのことです。さらに、自然に恵まれた東北の主力産業である漁業・農業の被害は、原発事故による被害も含めると測り知れない状況です。
 このような背景の下、弊社では被災した企業だからこそこの東北の地で貢献することが我々の使命であるとの想いで、社内に地域復興貢献室を設置し、中長期的に弊社のコア・コンピタンスを発揮して地域の復興に役立てるべく活動を開始しました。下図は、弊社の活動軸と目標とする価値指標です。

 このような状況下では、特定使命の単独のプロジェクトだけではなかなか解決できるものではなく、全体使命を実現するプログラムマネジメントの活用が不可欠と考えています。震災によって多くが失われた、ある意味「ゼロベース」のスタートだからこそ、プロファイリングマネジメントによって復興後のあるべき姿を描き、それに至るまでのいくつかの課題やシナリオを明確にした上で、特定使命の複数プロジェクトを実行し、プログラムマネジメントを実践していくべき時期ととらえています。そういう意味では、東北いや日本全体が今や復興に向けてP2Mに抱く期待が大きいものと考えます。東北に地を置く我々が東北の現状をよく把握しながら、そろそろ東北地区の研究会を立ち上げる時期に来ていると感じています。
以上
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