PMシンポ便りコーナー
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製造トラックへの思い

製造トラックリーダー 石橋 良造 [プロフィール] :11月号

PMシンポジウム 2011 が終わって1ヶ月経ちます。打ち合わせもなくなり終わったということを実感します。ちょっと寂しい感じもします。

昨年、はじめて当日のお手伝いとして参加してみて、企画からかかわってみたいと思い、今年は企画・運営委員として参加しました。その上、製造トラックのリーダーという役目もいただき、いろいろと経験できた楽しい1年でした。

新参者でありながら製造トラックリーダーになったのは、PMシンポジウムでは製造業の来場者が減っているということを知り、何とかしたいという思いからでした。私自身、キャリアのはじまりは製品開発の技術者で、その後、製品開発を支える仕組みやシステムを作る立場になり、今は製品開発を支援するコンサルタントをやっています。そして、日本の製造業が世界から注目され、憧れの対象であることをいつも願っています。

来場者が減っているということを知り、製品開発に携わっている技術者たちがプロジェクト・マネジメントへの興味をなくしつつあるのではないか、そして、世の中の人たちが製造業への興味を失いつつあるのではないかと、不安になりました。そんな思いを持っている中で仰せつかった製造トラックリーダーです。

製造トラックには今までにないくらい魅力的な講師の方をよびたいと考えました。サムソン電子をグローバル企業に育てたひとりと言われている吉川良三氏や、カプコンでヒット作を量産していた稲船敬二氏に働きかけました。結局、折り合いをつけることができず実現することはできませんでした。残念ですが、振り返って見ると、講師候補の方に対しても、委員会側に対しても働きかけが足りなかったのだと思います。私の実力不足ですね。

このような当初の思惑は外れたものの、結果的にはすばらしい講師の方々がそろいました。それが顕著にわかるのが当日のアンケート結果です。製造トラックの満足度スコアは 98 点で、すべてのトラックの中で最高得点でした。第1位です。また、昨年は全体の 8% だった製造業からの参加者が、今年は 10 % に増えました。 この結果を知ったときはガッツポーズを繰り返していました。心の中で、ですけど。

実際、製造トラックの講演はどれもすばらしいものでした。製造業やデスクトップファクトリーへの思いを熱く語っていただいたり、表面的になりがちがリスク管理でも地道に PDCA サイクルを回すことが大切なことを誠実に語っていただいたり、「はやぶさ」成功の陰にはビジョンや知識共有の大切さとその実践があることを語っていただいたり、知的刺激とエネルギーにあふれたものばかりでした。製造業からの参加者を増やしたり、製造トラックの受講者を増やすことも大切ですが、一番大切なものは講演内容なのだということを実感しました。受講者の方々に満足していただくことが最も大切なことで、それがシンポジウムの成功につながっていくのだと思います。

迷いや躊躇もあったのですが、講演のアブストラクト作成や講演資料作成を協力させていただいたのも、今は楽しい思い出です。製造業の講師の方々とつながりを持つことができるのは、とてもうれしいことです。トラックリーダーの役得といっていいでしょう。このようなお手伝いをしてみて、講師の方の中には講演に慣れていない方や時間がとれない方もいらっしゃるはずで、講演内容に対してももっとサポートできるといいかもしれないと感じました。

製造トラックに話を戻しましょう。

日本における製品開発は加工技術などの製造を中心とした「ものづくり」の時代から、価値創造の時代へと変わってきていると思います。顧客に対してどういう新しい価値を創造するのかが最初であり、それを実現するための設計技術や製造技術を考える、そういう時代なのだと思います。ここで必要とされるのは進捗管理を中心とするプロジェクト・マネジメントではなく、様々なプレイヤー(ステークホルダー)とのビジョン共有や、利害関係だけではないパートナーシップの確立、感性のエンジニアリング化、ヒューマン・セントリックな要素技術の利用、そういった複雑で多様な要素を取り込んだプロジェクト・マネジメントなのだと思います。そして、製造業こそがプロジェクト・マネジメントを進化させる原動力になるのだと信じています。

ぜひ、来年の PMシンポジウムでも、魅力ある製造業のため、製品開発に思いを持った多くの人に企画・運営にかかわってもらい、製造トラックの存在感をより大きくしてほしいと思います。えっ? 第三者的発言になっていますか? いえ、そんなことはありません。一緒にがんばりましょう。

最後に、企画・運営委員をはじめとする関係者の皆様、そして、講師の皆様とPMシンポジウムの参加者の皆様、本当にありがとうございました。
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