協会理事コーナー
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「PMAJへの思い」

株式会社CSK 熊谷 誠之: [プロフィール] :9月号

会社としての仕組みの整備とPM知識の普及
 わが国では、1990年代にISO9001の認証取得活動が活発になった。ISO9001は品質マネージメントシステムだが、プロジェクト管理活動全体に対する体系でもある。各社では自社内で蓄積したノウハウやSLCP-JCF(software life cycle process - Japan common frame)およびPMBOK®などを参考に品質マネージメントシステムを再整備した。また、この頃からIT系企業では、会社の中にプロジェクト監理を担う組織が設置されるようになり、プロジェクトの全社的な管理が行われるようになった。これは、大規模プロジェクトの失敗が経営に与える影響が大きなものとなり、失敗プロジェクトを防止することが会社としての重要な課題にとなってきたことが背景にあった。一方、人材の育成という観点では、PMP?の資格取得や、当協会が運営しているPMS資格等の取得により、知識の普及はずいぶん進んだように感じている。当協会による資格認定関連事業を通じてプロジェクト管理知識の普及が推進されたことは、大きな成果ではないだろうか。

実践力の構成要素
 ソフトウェア開発の現場に目を向けると、プロジェクト管理に関する資格を保有する社員は着実に増えているものの、大規模なプロジェクトを任せられる人材が不足している。大規模プロジェクトのプロジェクトマネージャを担える社員の数は部長の数より少ない。その意味で、優秀なプロジェクトマネージャは貴重だ。言うまでも無く、資格認定されたことと実践する能力があることは別である。筆者は実践力を構成する要素は、「知識」、「実践経験から得た対応能力」、「本人の特性」からなると考えている。

実践経験から得られる対応能力
 知識の習得は資格取得の為の自己学習により達成可能だ。本人の特性については、別の機会に述べさせていただく。ここでは、「実践から得られた対応能力」について着目する。
 プロジェクトレビューの場やプロジェクト管理者に対する指導の場面で、「理想はその通りですが・・・」といういい訳を良く聞く。頭では理解していて、腹に落ちていない場合にこの言葉は出てくる。問題が起こっているにもかかわらず、対応が遅く後手になってしまう。これは問題が引き起こす影響の大きさを正しく理解できていないときに起こる。セオリーどおりに運営せず、問題を引き起こし、影響の大きさを理解せずに対応を怠る。プロジェクトは失敗の坂を転げ落ちる。セオリー通りにプロジェクトを運営するためには、そのことに対して信念がなければならない。これを実施することは譲れないという気概のようなものかもしれない。調整が必要な相手を説得するときには、論理性と言葉の重みが必要だ。経験に裏打ちされ、信念を持って論理的に説明することで相手の気持ちが動き、考えが変わり、行動を起こさせる。こういったことを、実践を通して身に着けていくことで対応能力は向上していくと筆者は考えている。

協会への期待
 実践経験により実践力が高まることはP2Mの中で解説されている。実践経験も含めて評価し資格認定することも当協会は実施している。実践経験をさせることは各企業が担わなければならないことだが、「実践経験を通して効果的にプロジェクト管理者を育成する方法」は、まだこれからのテーマであり、「日本国内におけるPM実践家の育成」という当協会ミッションからすれば重要なテーマではないだろうか。評価し認定することに留まらず、このテーマに対する貢献を協会に期待し、筆者自らもこれに参画したいと思う。
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