地域活動コーナー
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「P2M & PMAJへの期待」

中部P2M研究会 水谷 美代志 [プロフィール] :9月号

 私が初めてコンピュータと接するようになった頃、その論理的に明確な反応を示してくれる対象とのやりとりに快い刺激を受け、それからずっとコンピュータに関わる人生を過ごして来ました。それと少しは関係があるのかも知れませんが、PMBOKに代表される欧米の理論的で明快な文書類に傾倒した時期もありました。しかし、いくら理論的に正しいと言われることでも、何かしっくりこない感覚的なズレのようなものがずっと気になっていました。そんなときP2Mと出会い、それが日本や日本人の感性に立脚したところから纏め上げられたものであるとの説明に、なるほど私が捜し求めていたものはこれだったような気がすると感じ、中部P2M研究会での時間を費やすようになりました。

 それからは、できればP2Mが本当に日本の中だけでなく世界で通用する知識体系、または考え方として普及して行けば良いと考えるようになりました。この、日本発のP2Mを世界で通用するものにするためには世界標準として認められる必要があると言われています。しかし、KAIZENや、TPMといったものでさえ、世界の中ではまだまだ理解されていない部分があると思います。それは、大陸では様々な人種が互いの主義主張を、相手の思想信条を理解することなく通そうとする場合において生じているようにも感じます。それが、「理論的に正しくても受入れ難い」理由ではないかと考えます。ところが、海で切り離された狭い国土で生活してきた日本人の中には、自分の主張よりも人をとりまく環境の方を重んじて、コミュニティーとしてどう行動すべきかを考える人が多いのではないでしょうか? その為そこで生まれたP2Mは、プロジェクトやプログラムをどうマネージメントするのが良いかということに対し的確な回答を与えられる気がしています。

 プロジェクトを場としてとらえ、そこに関わる全て人やモノのあり方を一段高い見地から最適化した解を考えるという手法は、ビジネスの面だけでなく、自分の生活やその他の課題解決など適用範囲は広いと私も考えています。しかし、世界で通用するにはもっと簡単で明快な思考ツールのようなものがあると良いと考えます。但し過去の成功、失敗のプロジェクトを分析して、とった施策の正しさを事実として示すやり方は、一見わかりやすいのですが、本質を見誤りやすいと思います。なぜなら、プロジェクトはその時々で個性的であり、いつもその手法が正しいとは限らないからです。それよりも私は、そのプロジェクトに関与したPM個人の能力とか個性に着目すべきだと感じています。

 私の理想とするPM像は、そこに居るだけでプロジェクトがうまくいく、そんなオーラのようなものを発散している置物のような存在です。必死で走り回る姿を関係者に誇示するようなPMではなく、熱い思いをこころの底にたぎらせ人知れず努力する。その結果が相手のこころを揺り動かし共振し場の空気さえ変化させる存在です。それはP2M同様すぐには理解し難い存在かもしれませんが、PMAJの支援の下でヒントになり、いずれ解明され理解され、価値ある存在として広まることを期待しています。
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