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「異なる時間感覚との戦い」

仲野 隆 [プロフィール] :9月号

筆者は2009年4月からインドネシア子会社が自立してプロジェクトを遂行できるよう支援する業務を当該子会社にて実施している。最近は現地のローカルスタッフ中心のプロジェクト遂行も多くなってきたが、日々彼らとの時間感覚の違いに悩まされている。
プロジェクトには始まりと終わりがあり、基本的に時間軸が設定されるのがプロジェクトの特徴であることは誰でも知っていること。P2Mでも「タイムマネジメント」がありプロジェクトの重要な管理項目の一つである。しかしながらインドネシア人にとっての時間は日本人のそれとは異なることが感じられる。一般的なインドネシア人の時間感覚が日本人と異なることは彼らの行動パターンにしばしば表れる。例を挙げると、
1. ミーティング時間が設定されても、この時間は一つの目安であり絶対的なものではないとの認識があり、全員がそろうまでに時間が掛る。
2. 努力しても遅れが発生する場合は仕方がないことと納得する。時間を守るための努力は限定的となる。
3. 解決に時間を要する問題は後回しにし、目の前にある解決容易な事柄から手を付ける。重要度による優先順位付けが行われない。難しい問題は後になってから表面化し、解決のための時間とコストは余計に掛ることになる。
4. 毎日の日課であるお祈りが他に優先する。(インドネシアでは人口の約9割がイスラム教徒と言われている)・・これは宗教上の教え故致し方ない。

勿論インドネシア人の全員がこのような考え方を持って行動している訳ではない。日本人と同様に時間に対する厳しい考え方をする人もいるが少数派である。だが、他のローカル企業も含め大部分のインドネシア人にとって時間に対する感覚がこうしたものであることが多いので、プロジェクト遂行においてもスケジュールを作成し理解はするものの、それへのこだわり方は日本人とはかなり異なり時間厳守、納期厳守へのこだわりや努力は弱くなる。(その一方でプロジェクトの一面として、契約書には終わりの時期が記載されているし、遅延の場合のペナルティーが書かれていることも多い)

こうした彼らの時間感覚にはその気候風土が少なからず影響しているのではと筆者には感じられる。一年中温かく、雨も十分に降り農作物もそれほど手をかけずとも収穫できる。無理をしなくとも、あせらずとも生きていける・・・。多少時間が守れなくとも・・・大事無い・・・というような人生観が根底にあるからか、或いはDNAに刷り込まれているからだろうか?というようなことを毎日自問する。

こうした人生観を少なからず持っているであろうインドネシア人に納期通りにプロジェクトを終わらせることの重要性に目覚めさせるには、恐らく妙薬というものは無く、日々目標に向かって努力を強いることの積み重ねが重要であり、彼らの意識改革そのものが一つの大きなプロジェクトのような気がしてきている。
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