グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第54回)
P2Mを知る首相の誕生へ

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 今年このコラムは休稿ばかりで、今回が3回目であるから、私は3割ライターであり、連載コラムでは失格になってしまった。このまま消えていこうと思っていたら、編集長から「PMAJの理事長を退任して2カ月が過ぎ、そろそろ整理がついたでしょうから、また続けてはいかがですか」と云うありがたいお誘いがあった。
 では、7月のフランスでのP2M講義のことを書いて再スタートを切ろうと思っていたら、本日8月29日大きなニュースが伝わった。民主党の代表選挙で野田佳彦財務大臣が勝利し、新代表そして日本の首相となることが事実上決まった。実は野田首相が誕生すると、我が国で初の“P2Mの存在を知る首相”となる。国家元首としてはウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領に次いで2番目である。

 私は、本年2月22日、に公務で来日中のウクライナ Fedir Yaroshenko財務大臣の随員(大臣顧問)として野田大臣と面談する機会を得た。
 これは両国財務大臣間の40分の公式会談であったが、Yaroshenko大臣(写真中央)から、「ウクライナ国の最大の課題である財政再建のプログラムにあっては貴国のP2Mがプロセス・フィロソフィーの柱となっており、本日私の顧問として出席している田中弘先生から多々ご指導を戴いている」という有難いご紹介を戴き、また、私のウクライナ財務省でのP2M講義に基づき、大臣自ら作成されたプログラムマネジメント教書(英語版)を渡された。
 面談終了後、たった2分ではあったがお時間をいただき、私から野田大臣に、Yaroshenko大臣が紹介されたP2Mとはこれです、とP2M豆本をお見せして我が国発のイノベーションのマネジメント体系であるP2Mを強調させていただいた。

 野田大臣は、リーダーシップを発揮しないでいるこの国の首相初め大臣のなかで、官僚も嫌がるような円高鎮静のための市場介入を断固行ったり、慎重にではあるが増税について言及するなど、明日の日本のために必要な路線を敷く政治姿勢を持っている。本日の代表選での政見表明でも、ぶれることなく、日本を再建する先導政治を行う決意を表明された。
 ウクライナのYaroshenko大臣も、永年財政不安が続いた同国で、昨年2月に財務大臣に就任した直後から猛烈に財政再建に取り組み、増税を含めた健全予算編成を成し遂げ、財政バランスを回復基調に乗せた(2009年のGDP成長率▲19%、2010年+4.5%、2011年+4.6%見込み)。経済規模、産業基盤、政治文化など彼我の違いはあれど、大臣一人の強いリーダーシップ、イノベーションを指向するマネジメントのスタイル、そして実成果で自らの政治家としての達成感を量る“プロジェクトマネジメント魂(大臣)“で、国は大きく変わるものであると若干ではあるが大臣に縁がある者として強く感じる次第である。
 私の思うところ、野田大臣も強い意志と不屈の精神を持っており、実成果を重んじる姿勢がある。大臣にイメージとしては薄いイノベーションについては、これから首相として超多忙な日々が待ってはいるが、ぜひ日本にはP2Mが有るという事を思いだされて、日本のかじ取りにP2Mの精神を反映して戴けないかと願っている。

 体調が十分ではなく、控えていた私の海外活動も、秋には再開したいと願っている。その間バーチャルには、体調と相談しながら電子媒体で大学院生の指導を行うなど、再び世界に貢献することができるようになってきた。    ♥♥♥♥♥

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