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「広く伝える」と「深く考えさせる」、二つの取り組み (交代のご挨拶)

ITベンチマーキングSIG代表 富士通株式会社 城川 淳 [プロフィール] :8月号

 皆様、はじめまして。前任の久保野さん退任に伴い、7月からSIG推進部会を担当することになりました、城川です。どうぞよろしくお願いします。
 今回はご挨拶代わりに、弊社のプロマネ教育の中から、私が担当している二つの取り組みについてご紹介させていただきます。

 一つ目は、この7月に開催した「プロジェクト事例研修会」(以降、「事例研修会」)です。これは、過去の失敗事例を社内に「広く伝える」ことを目的に実施しているもので、今年は弊社のSE/営業の幹部社員約800人を集めて、大田区民ホールで開催しました。
 この取り組みは、「失敗プロジェクトから学び、同じ失敗を繰り返すな」との当時の社長発案で2006年に開始され、それ以降毎年継続開催しています。例年、数件の失敗プロジェクト事例について事象、背景と原因、教訓等を紹介してきましたが、過去5回の開催で失敗パターンが類型化されてきました。
提案段階における楽観的な見積もり、提案と契約の差異、現行踏襲保証
立ち上げ時の初期体制不備
設計工程における開発規模コントロールミス、工程完了判断ミス、等
 (この詳細内容については、機会があれば別途ご紹介します。)
この事例研修会の成果だけではないでしょうが、ここ数年、弊社の失敗プロジェクトは確実に減少傾向にあります。
 私は今年度の事例研修会事務局として、上記の状況を踏まえて事例研修会の内容をマイナーチェンジしました。失敗事例だけではなく、時流を反映して海外ビジネスやクラウド等の最新サービス事例、意欲的な取り組みによる成功事例もプログラムに加え、半日で7事例を紹介しました。個々の内容については説明を割愛しますが、終了後のアンケート結果も概ね好評価で、ひと安心したところです。
 この後、当日撮影したビデオ映像を編集して全社向けに公開する予定ですので、最終的には数千人が同じプロジェクト事例を疑似体験することになります。今年で6回目になり、マンネリとの声も聞こえ始めましたが、色々と工夫しながら、「同じ失敗を繰り返さない」という当初の目的を忘れずに継続してゆきたいと考えています。以上が、「広く伝える」ことを目的とした取り組みです。

 二つ目は「深く考えさせる」ことを目的とした「プロジェクト事例プロマネ研修」(以降、「プロマネ研修」)という教育で、私がコースオーナー兼講師を務めています。
 これは、中級プロマネを対象に、過去の失敗プロジェクト事例を基にリスクの洗い出しから問題の真因追究、教訓導出を行う演習中心の、いわゆるケース・スタディです。このプロマネ研修の特徴は、個人演習でじっくり考えた後に、講師と少数(3~6名)の受講生が同じテーブルを囲んでとことん議論する、ということです。受講生の担当業種や役割によって解決策を導くまでのアプローチ方法が全く異なる場合も多く、毎回かなり盛り上がります。もしかしたら、「積極的に議論に参加しない場合には不合格になる」というウワサ(?)が社内に流布しているせいかもしれませんが、講師としても「プロマネの答えはひとつではない」ことを再認識させられます。
 研修日当日だけで終わりにしないことも重要だと考えています。プロマネ研修終了の約1週間後には、講師から各受講生に対してそれぞれの強み・弱み・改善アドバイス等のフィードバックを行います。受講生には、研修終了時に宣言する「自分自身の課題とそれを克服するために自プロジェクトで取り組むアクション」に対する3ケ月後の結果報告を義務付けています。プロマネ研修当日だけだと1日間ですが、事前課題から3ケ月後報告まで含めると約4ケ月間の研修ということになります。講師は、この期間を通じて受講生とキャッチボール行い、それらを全て評価して合否判定を行う仕組みにしています。
 また、指導する立場からも「アフターサービスは永遠です。現場で困ったことがあったら、いつでも質問してきて下さい」と宣言しています。中には、回答に苦慮するような難しい質問が来る時もありますが、講師の手に余るような場合にはジャンルに応じた専門部署や有識者の助けも借りながら対応しています。こうしたプロジェクト現場の悩みや生の声を聞くことによって、講師陣も受講生に「深く考えさせる」だけではなく、自分自身も「深く考える」ことで成長してゆけるのです。

 以上が、私が弊社内で取り組んでいる二つのプロマネ教育です。ほんの概要レベルしかご紹介できませんでしたが、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

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