PMシンポ便りコーナー
先号   次号

PMシンポジウムに想う事

増澤 一英 [プロフィール] :8月号

近年のPM力はすごい。時として、そして、折に触れそう感じる。自分が歳を重ねたのを差し引いても現実的にプロジェクトマネジメントの進化は相当な物だと思う。

範囲の広がりについて・・・幾らかの昔、アメリカDOD(国防省)でのCPM開発から始まったと云われるProject Managementはエンジニアリング、建設業でダイナミックな発展を遂げた。折しも、大型プロジェクトが目白押しのエネルギーを惜しむことなく使う時代であった。エネルギーの無駄遣いに費やしたコストもたぶん馬鹿にならない。しかし、そのような代償を払いつつ、PMは休むことなく進化を続けた。21世紀に入ると、さすがにエネルギーの効率的な利用に人類は気がついた。と同時にITの進化にPMを活用し、多くのIT企業に浸透する。今や、IT業界のノウハウなくして、PMを語ることはできない。

手法の広がりについては・・・今やPMだけではプロジェクトをマネージできない組織が多く存在する。プロジェクトを有機的にマネージし、コントロールしないとプロジェクトの成果が得られない、否、プロジェクトは単にTemporaryなProduct Lifecycleの一端を担うだけの存在から、会社の利益構造の中で柔軟に計画され、迅速に実行されねばならない存在になった。プロジェクトはプロジェクト単体の評価より、プロフィット構造の評価に組み込まれる。プロジェクトマネジャーも過去に比べると随分多くの知識と技能が要求される。プログラムやポートフォリオを意識しないとプロジェクトは成り立たない。個人的にはいやな時代であるが、世界的にはものすごい熟成を見せる。広く、深いPM力が要求される時代です。

世界への広がりというと・・・PMはおいしいのか。世界各地で広がりを見せる。うん、やっぱりそんなにおいしいPMを放っておく手は無い。PMで、社会インフラを整備するのだ。PMは企業力を向上させる鍵だ。よし、PMを導入して多くの利益を享受するのだ。今や世界中がPMを見つめている。世界各地でPMは評価される。常に時代にマッチした先進のPMを学んで、広げなければ直ぐに頓挫する。そうだ、広げる力が要求される。説得力、持続力、そしてスピード観を持ってこそ、これからのPMの時代だ。仲間を増やす時代だ。

日ごろ感じることを、少し強引な3段論法(3点支持?)で、過去から今日へのPM動向みたいに書いてみた。PMシンポジウムはこんな環境の中で発展してきた。そして今後も今まで以上に敏感な世界観を持って展開する。未来を拓くのがPMシンポの夢であり、未来を開く情報を提供できるのが、PMシンポの価値である。

今年のPMシンポの見所、勘所として、例えば、上記のような見方でトラックを眺めてみると面白いと思います。各トラックの歴史や重みが分かります。もちろん、皆さんには、いろいろな想いがあると思いますので、うまく説得することは、なかなか難しいのですが。

そして、もうひとつ。皆さんはあまり意識されていないかも知れませんが、実は隠れたシンポジウムのテーマに、製造業のPMがあります。パンフレットには大々的な広告を掲載してはいません。でも、実行委員が常に意識し、実行委員会でハイライトされていることです。なぜなら、今日の複合、統合的なプロダクト、インフラ、あるいは、先端技術分野での基盤を構築するには、製造業のPMは不可欠、言葉を変えると、製造業がプロジェクト遂行の肝を握っているケースがとても多いのです。正しくは、建設やIT、宇宙や薬品といった分野のPMに加え、製造業のプロセスをマネージしないと、これらの統合プロジェクトは成り立たない、ということです。統合プロジェクトは規模や深度も少し大きく深めになる。しかし、今のスピード感は変わらずに維持。そして、プロジェクトを正当に評価することが、発注者にも受注者にも求められる。PMはDODから始まったとして、考えてみると、製造業に先ず浸透しなかったのは不可思議。たぶん当時は、十分な利益構造が完成していた業態が多かったのかなと思います。そして、様々な形態で、製造業が今からはPMの中心的存在に移行します。

今年は不幸にも東日本大震災があり、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。復旧にはいろいろな形で日本のパワーが結集する機会が多い。当然、統合的成果を発揮するPMも必要とされる。できる限りの支援の輪を広げるのもPMシンポの役割と信じています。
ページトップに戻る