関西P2M研究会コーナー
先号   次号

私が関西P2M研究会から得たもの

下野 善弘 [プロフィール] :8月号

 筆者が、関西P2M実践事例研究会に参加してからもう4年になる。続けてきた理由はただひとつ、自分にとって大きなメリットがあるからである。この研究会には、様々な会社、業務、役職の方々が参加しており、私自身、研究会や人材交流の場で非常に多くのものを得ることができた。今回はこの研究会のメリットを紹介し、ぜひ多くの方にP2M研究会に参加してみよう、という気になって頂きたいと考えている。

 P2M研究会はいくつかのサブ研究会となる分科会から構成されていて、私はこの中の一つである「オフショア分科会」に参加しており、現在は推進リーダーである。このオフショア分科会は、日本から海外にソフトウェア開発を委託する方法論に関する研究会である。私が、この分科会に入ったきっかけは、モスクワにある自社のソフトウェア開発拠点を任されることになり、より良い運営方法を得たいということであったのだが、これについては本当に感謝している次第である。分科会のメンバーは実際にオフショア開発を行っている実務者が中心であり、事例やそのときの状況を聞いたり、プロセスの分析をしたことは、私の実務上にも大きく役立った。特に、当初オフショア開発に素人だった私にとって、メンバーとの会話、議論により、オフショア開発における実務経験や勘所を自分の感覚にできたことは大きかった。実際に私が担当したオフショア開発にも多くの課題やいくつかの問題も起こったが、オフショア開発に経験の無かった私が自信を持って対応することができたのはこのおかげであった。

 また、オフショア開発に関する研究や深堀りがほかの業務にも非常に役立ったことがある。それは対象が海外であることから、日本と海外との違いを客観的に認識できたことである。オフショア開発では離れた海外としかも外国人とやりとりをするため、コミュニケーションの問題が一番大きく、解決のためには、日本と相手先の国や文化の相互理解、個人レベルの相互理解が非常に重要な課題になる。そして、この課題の研究過程で、日本と海外との違い、日本の良さ・悪さ、海外の良さ・悪さがより良く見えるようになった。オフショア開発ではもちろん重要なポイントになるのだが、オフショア開発以外でも、常に日本の良さ・悪さを意識し、良いグローバル流を取り入れることが、現状の問題把握、業務改善にも繋がるのである。

 次に、社外活動としての良さを述べたい。一般的に、社外セミナーで講義に内容を聴くことは簡単にできるが、対象が広範囲なため一般論にならざるを得ず、自社にはすぐにうまく適用できないことが多い。P2M研究会には多種多様な分野での有識者がおり、わからないことを聞く、議論する、逆に教える、などにより理解が深まり、単なる知識ではなく、自分のものとして体得することができた。特に良かったのは、自社の強みや弱みがわかることである。実際、各社及び各組織では、前提となる状況が様々で、その状況に応じてかなり有効なPMを推進しているのが事実である。他社の方と深掘りした話をすることで、自社の真の弱みだけでなく、社内にいるだけでは見えない強みを認識することができ、本当に必要な改善の認識や、ほっておけば弱体化するかもしれない自社の強みの維持にも注力できるのである。

 また、良い人的ネットワークはどんどん広がっていくことを言っておきたい。私もこの研究会を通じて多くの人を紹介して頂いただけでなく、多くの他の社外コミュニティも紹介して頂いた。そして、どれもが活気あふれるすばらしいコミュニティであり、関西の元気さを認識することもできた。これらの社外コミュニティからの人的ネットワークも含めたら広がりは無限である。時間の制約もあり、すべてに参加を継続することはできないことが本当に残念である。

 最後に、分科会を進める上でのPMについても勉強になったことを挙げておきたい。当初の小石原さん前研究会主査は日本流にもグローバル流にも精通しておられ、多くの助言を頂いた。また、オフショア分科会のメンバーはソフトウェア開発分野のため多忙な人が多く、活動が停滞していたときに、小石原さんからいろいろと指導を受けた。分科会リーダーと推進リーダーを分けたのもその一つである。結果として、事例のプロセス分析、実務者が持っていた7つの課題分析、新しいオフショア開発手法の提案などの成果を出すことができた。これらの成果は、PMフォーラム2009京都でも報告し、完成した報告書は教育や説明資料としても役立っている。

 以上、私が関西P2M研究会、オフショア分科会で得られことを述べてきた。どれも社内にいるだけでは得ることが難しいものである。しかし、関西では社外に出たことの無い人がかなり多く、非常に残念に思っている。忙しくても一歩踏み出し、まずはこの関西P2M研究会に参加することをお勧めしたい。
ページトップに戻る