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「私たちのP2M (Project & Program Management )」とは何か、考えてみませんか
-発注者が求めるプロジェクトの見える化をしよう (8)-BMの勉強①-

渡辺 貢成:8月号

P2Mとお付き合い頂き、16回目になりました。
先月はミッション・プロファイリングにおける「「ありのままの姿」、「あるべき姿」を描くおさらいをしました。
図1 ミッションプロファイリング策定図
(1)経営を俯瞰すると自社の特徴が見えてくる
 経営を俯瞰するおさらいをしました。
(2)洞察力で「あるべき姿」を描く
 ここでは洞察力を便宜的に過去、現在、未来のBM(ビジネス・モデル)を採用することを考えます。

 先月号で日本企業の伸び悩みのお話しをしました。アナログ時代の競争力一位が、デジタル化時代の変化を自らの力で切り開くことをせず、官民こぞって「アメリカ出羽の守(アメリカではこれこれをしている)」を頼りにする守りの経営が今日の結果を生んだ話しをしました。その事例としてデジタル技術を使った2つのBMの事例を説明しました。
(3)日本が何故サムスンに敗れたか!
 日本の敗因を「OWモデルを使って解析」しました。
 彼らの勝因は
日本の技術とそのノウハウを徹底的に調べ、これを採用したこと
松下流の顧客サービスを考え、新興国の顧客への密着を果したこと
顧客と接触するなかで、顧客の潜在ニーズをつかみ、これを製品に付加したこと。
安くて、良いものを目指したこと
 日本製品の不要な機能を徹底して削除し、製品の質に見合った安い部品を採用した。
  これぞ高度成長期の日本人の精神でした。

1. 今月からBMの研究をしましょう
さて、日本再生には「アメリカからのおこぼれ」を待つのではなく、自らの力で新しいBMの開発することが求められています。そして日本のミドルはそれを開発する能力を持っています。ミドルがトップとなった瞬間から活力が低下しているのが現状です。そこで今月から連続して「あるべき姿」を描く、各種BMについて話を進めていきます。

(1) BMの基礎編:あなたはBMをつくれるか! →簡単につくれます
ここが大切です。俺にはBMなど関係ないよと思っていませんか?
あなたが今実効している仕事のやり方が、あなたのBMです。あなたはそのBMによって報酬を得ているわけです。繰り返しますが、人によって異なる、あなたのBMが上司に認知されて報酬を得ているわけです。
では、日本の企業で、あなたのBMが正しく評価されているでしょうか、それによって報酬が変わるのでしょうか。米国企業は個人の評価と業績を厳しく査定し、報酬を決めています。評価とは単に結果だけではなく、よい業績を出した基本的な仕事のやり方(BM)も含めて行います。

米国企業の上司は部下にこの期間内で実施する仕事の詳細な内容について業務詳細指示書を出し、何ができたら合格であるかの基準を同時に示します。そして上司は3ヶ月に一度面接を行い、業務について評価し、話し合いの結果、査定します。ここで業績を上げないと報酬も地位も上がりません。上司は彼の業績と、結果を生み出す彼のBMを観察しているのです。係長としての彼のBMが課長に匹敵する業務遂行のやり方で、部下や、業者をうまく使っていたとします。上司は彼のそのBMとそれを上手く使える実行能力を評価して、昇進の機会を与えます。

今、グローバル企業はこの個人の評価基準を世界中の子会社にも適用し始めています。P&G社は人事の評価基準をグローバル統一基準で行っています。そして日本国内での業績が花王や他のライバルを抜いて好調です。日本的きめの細やかな商品開発が業績につながっているようです。そしてこのBMが世界の子会社へ伝授されていきます。この日本的なBMが日本以外で使われると、世界の他のライバルは圧倒されてしまいます。では日本人のもつ特徴で世界制覇ができるかというと、日本人にはそれなりの弱点があります。弱さの部分は他国で開発されたBMを持ち込めばよいわけです。

ここまで読んで、皆さんはどのように感じましたか。あなた自身でチェックしてください。
わたしのBMをよく理解し、効果的に使っている
私にも新しいBMをつくることができそうだ
私は誇りに思う個人のBMを確立している
他人のBMを常に取り入れ自分のBMを改善している
現在の地位のBMから、更に上位地位のBMを考え、実行している

日本再生には個人が、現在のBMではなく、グローバルに通用するBMをもつ必要があります。それを実行するのはミドルではなくて、本当な経営者でなければなりません。

大震災での被災者の立派な態度は災害慣れした庶民の行動モデルが身についているからです。善してください。これに引き換え、日本のトップは自分のBMをもっていないのが目立ちます。事故を起こした電力会社のトップの最初の発言は他人事でした。「想定外の事故」で暗に自分に責任はないことを弁明しました。原子力という危険なものを取り扱っている企業のトップは、その社会的責任感を持つゆえに原発企業のトップとなっている筈ですが、原発保持企業のQA(品質保証)は何か学んでいないようです。

経済産業省は監督官庁として情報に関する説明責任があります。米国のNRC(Nuclear Regulatory Commission)は大統領の指令を受けると、発電所の運営管理、事故処理の全責任を任されます。3,200名の専門スタッフを要しているため、責任を果すことができます。
日本では素人の総理大臣に責任を転嫁して、監督官庁としての弁明が全くありません。

私達はビジネススクールで教えられる「華やかなBM」を「アメリカ出羽の守」的に学んできましたが、トップは如何なる事態に遭遇しても、逃げずに立ち向かうモラルを持った人々であるべきです。トップを評価する仕組が失われた企業ではミドルが頑張っても、企業能力の向上につながらないことは自明の理です。
今回は会社のBMではなく、個人のBMの大切さから「BM入門」を始めました。
以上
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