地域活動コーナー
先号   次号

「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」について

理事 P2M研究部会会長 梶原 定: [プロフィール] :7月号

”Start with Why”の著者であるサイモン・シネック氏が、【TED】の中で、シンプルで強力なモデルを使って「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」についての講演VDOを見ての感想をお話します。

VDOの中で、彼は、「ゴールデンサークル」と呼んでいる、あるパターンを、発見したと述べています。 具体的な成功事例として、アップル社やマーチン・ルーサー・キング、ライト兄弟を取り上げています。 例えば、どうしてアップル社はあれほど革新的に、毎年毎年、他のコンピュータの会社と同じように人材を採用し、代理店や、コンサルタント、またメディアを使用しているにもかかわらず、他の競合メーカーのどこよりも 革新的であり続けているのか? なぜアップル社は、他のコンピュータ競業メーカーと「何が違うのか?」 また「何かがあるように見えるのか?」

彼が発見した答えは、 「ゴールデンサークル」と呼んでいるあるパターンであると言っています。 それは、人を動かす指導者や組織は、全てアップル社でも、マーチン・ルーサー・キングでもライト兄弟でも、考え、行動し、伝える仕方がまったく同じパターンであり、そのやり方が、他の人達とは正反対であると述べています。 それは、世界でもっとも単純なアイデアかもしれませんが、 なぜ? どうやって? 何を? このアイデアで、ある組織やリーダーが、なぜ、他にはない力を得ることができるのかを、分かりやすく説明しています。

世の中で、働いている人は、誰にせよ どの組織にせよ 自分たちが「何」をしているかはわかっています。 また 多くの人達は、「どうやるか」もわかっています。 それは差別化する価値提案とか 固有のプロセスとか 独自のセールスポイントとか呼ばれているかもしれません。 でも「なぜ」、「何のために」やっているのかがわかっている人や組織は、非常に少ないのです。  「利益」は、「なぜ」の答えではありません。 それは、あくまでも結果です。 「なぜ」というときには 「何のために?」、「何を信じているのか?」や「組織の存在する理由は何か?」という組織の目的、を問うているのです。 実際のところは、多くの人達の発想は、「何を」=>「どのように」=>「なぜ」の順番で、行動し伝えるやり方なのです。 即ち、明確なことから曖昧なものへ向かうやり方なのです。

例えば、アップル社が他のコンピュータ会社と同じだったら、おそらく次のようなCMを作るでしょう 「我々のコンピュータは素晴らしく、美しいデザインで簡単に使え、ユーザフレンドリーです。 ひとつ、いかがですか?」。 ほとんどは、このように伝えます。 何をして どう違い、どう優れているかを述べ 相手に何か行動を期待する方法です。 いかがですか? これでは心を動かされませんよね。

一方、すぐれたリーダーや 飛び抜けた組織は、その規模や業界にかかわらず、考え行動し伝える時には、この伝え方ではなく、「なぜ」=>「どのように」=>「何を」の順序で中から外へと向かうやり方をしているのです。

このゴールデンサークルのパターンでは、アップル社ならこんな風に伝えます。 「我々のすることは、すべて世界を変えるという信念のもとで行っています。 違う考え方に価値があると信じています。 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、誰でもが、簡単に使え親しみやすい製品なのです。 その結果、こうして素晴らしいコンピュータができあがりました」 一つ欲しくなりませんか? いかがですか? 全然違うでしょう? 買いたくなりますよね?

このように、発想の仕方が、順番を逆にし、伝えることでした。 大事なことは、人は「何を」ではなく 「なぜ」に動かされるということです。 自分が提供するものを必要とする人と、ビジネスするのではなく、自分の信じることを信じる人とビジネスするのを、目標とすべきなのです。

だから、人はだれもが 安心してアップル社から コンピュータを買っているのです。 そしてまた MP3 プレイヤーやスマートフォンやビデオレコーダーも、安心してアップル社から買えるのです。 でも アップル社は、単なるコンピュータ会社です。 アップル社と他社とで、何か仕組みが違うわけではありません。 競合会社にだって同様の製品を作る力があります。 実際、挑んだこともあります。 数年前にはゲートウェイが平面テレビを出しました。 ゲートウェイにはそのための卓越した技術があります。 PC用の平面モニタを何年も作ってきたのです。 しかし全然売れませんでした。 デルは、MP3プレイヤーとPDAを発売しました。 非常に高品質な製品です。 デザインも申し分ありません。 でも全然売れませんでした。 でもみんなアップルからは買うのです。

P2Mでは、プロジェクトとは、特定使命を受けて、資源、状況などの制約条件のもとで、特定期間内に実施する将来に向けた価値創造事業であると定義されています。 また特定使命は、プロジェクトに期待される総合的達成要求のことです。 この要求を明確にすることが、プロジェクトマネジメントの出発点となりますと記載されています。 そこで、このゴールデンルールのパターンを、プロジェクトにあてはめると、まず、最初になすべきことは、「何のために?」、「何を目的に」、「どのような信念のもと」で、プロジェクトを実施していくのか、特定使命を明確にし、プロジェクトに対する考え方、目的、目標、方針、手段をまず、規定し、関係者に浸透し、進めていくことが、なによりも、プロジェクトを成功裡に導く上で、大事な鍵ではないかと思います。

(注1) TED (Technology Entertainment Design)とは、アメリカのカリフォルニア州モントレーで年一回、講演会を主催しているグループのこと。 TEDが主催している講演会の名称をTED Conference(テド・カンファレンス)と言い、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物が講演を行なっている。(WikiPediaより)

(注2) 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」のVideoのURLは、  こちら を参照してください。

ページトップに戻る