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「リスクマネジメント・ツールボックス (9)」

河合 一夫 [プロフィール]
 URL: こちら  Email: こちら :6月号

 先回、TRIZのツールの一つであるAFD(Anticipatory Failure Determination)の概要を述べた。本稿では、AFDと他のツールとの比較やプロジェクトにおけるAFD利用時の具体的なステップを述べたいと思う。
 他のツールとの比較を次に示す。これらのツールには、それぞれの特徴から適した利用がある。また、シナリオを利用するという点で共通している[1][2]

 AFDは、FA(Failure Analysis:故障分析)とFP(Failure Prediction:故障予測)の2つの手法から構成されていることは先回述べた。FPの実施ステップを次に示す[1][2]
1. 対象となるシステムやそのプロセスの障害を見つけるための問題ステートメントを記述する。
2. システムのプロセスが成功するシナリオを特定する。
3. 最初の問題を反転させた問題ステートメントを記述する。
4. プロセスを失敗させる明白な方法を見つける。
5. 利用可能なリソース(資源)を特定する。
6. 知識ベースを利用する。
7. 新しい解決案を考案する。
8. 危害となる影響を増大させる方法と低減させる方法を記述する。
9. 明らかにされた危害の影響を分析する。
10. 特定された障害シナリオ(リスクシナリオ)を用いて原因を取り除く。

 AFDのもう一つの手法であるFAも同様なステップで実施する。過去に発生した事象と将来発生する可能性のある事象を同様な方法で分析できるところにAFDの特徴がある。また、FAやFPを実行するためのテンプレートもある[1]。本稿における説明では、システムや機器の安全性の向上に役立つような記述となっているが、プロジェクトにおけるリスクにも十分に対応可能である。但し、プロジェクトでは、内部や外部環境、多様なステークホルダーを考慮する必要があるためAFDだけでは十分とは言えない。そこで、これまで説明したツールを組み合わせることが重要なポイントとなる。
 これまで数回に渡ってリスクマネジメントで利用される代表的なツールについて述べた。これらのツールを有効に利用するための手法が必要となる。また、リスクは、将来の不確実な事象を扱うため、個人による認知に対する考慮が必要である。次回からは、このことを解消する「リスクの見える化」について述べたい。

参考文献
[1] Stan Kplan, et al.,New Tools for Failure and Risk Analysis,IDEATION,1999
[2]   リンクはこちら
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