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「リスクマネジメント・ツールボックス (8)」

河合 一夫 [プロフィール] URL: こちら  Email: こちら :5月号

 今回と次回は、AFD(Anticipatory Failure Determination)について説明する。AFDを日本語に訳すと「予期される故障の決定」といった意味合いになる。先月号では、リスク分析において根本原因分析を行う場合には、複数のツールを組み合わせることがポイントであると述べた。その組み合わせるツールの候補の一つにAFDがある。本稿では、AFDの概略について説明をする。
 AFDは、FA(Failure Analysis:故障分析)とFP(Failure Prediction:故障予測)の2つの手法から構成されている。次の図は、2つの手法の関係を示したものである[1][2]

 AFDの特徴は、「リソース(資源)」と「逆転の発想」を用いた「仮説」によるアプローチであるということである。すなわち、問題が発生している状況では、必ず問題を実現するリソースが存在していると考えるのである。例えば、「発火」という事象を考えると、「可燃物」、「酸素」、「発火温度」の3つが存在しなければ「発火」という事象は起こらない。従って、この3つの要素が存在していることが分かれば「発火」というリスクが存在することがわかる。また、逆転の発想とは、問題を故意に起こすことである。意図的に問題を発生させるにはどうすれば良いかを考えることで、経験者が持っている知識を顕在化させるプロセスとすることが可能となる。さらに、その問題発生メカニズムを理解することで真の原因を発見する可能性も高まる[1]
 AFDでは、「すでに発生した故障への対処」と「これから発生するであろう故障の対処」を扱う手法になっている。「故障」を「問題」に置き換えれば、一般的なリスク特定の手法として利用できる。FAを利用する目的は、「既存製品(プロジェクト)にすでに発生している故障(問題)の解消」である。故障(問題)の発生メカニズムが明確であれば、その原因の究明および解消は容易である。しかし、実際のシステムやプロジェクトでは、発生する問題のメカニズムが不可解であることが多く、要因を考える過程の大半はブラックボックスであり、実際には担当者の経験や勘に頼る部分が多い。AFDの特徴は、「リソース(資源)」と「逆転発想」を用いた「仮説」によるアプローチであることは述べた。また、リスクシナリオを利用する。この点は、FAEA、HAZOPと共用することで、より有効なリスクアセスメントが可能となる[2]
 FA手法の特徴は、担当者の気付かない故障メカニズム(問題発生メカニズム)を解明して、故障(問題)の解消や提言を行うことであり、FP手法の特徴は、発生可能性のある故障メカニズムの仮説を創造して、将来の心配の種を排除することである。AFDは製品の信頼性保証に有効な手法である。また、製品の信頼性だけでなく、さまざまな場面において有効な手法である。次回は、AFDのステップや他の手法(FMEA、FT、HAZOP)との関係について考えてみる。また、製品の信頼性保証だけでなく、一般のプロジェクトで利用可能なようにAFDのステップを説明したいと思う。

参考文献
[1] 澤口学,竹村政哉,TRIZレター,産業能率大学,2004
[2] Stan Kplan, et al.,New Tools for Failure and Risk Analysis,IDEATION,1999
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