「偽善エネルギー」
(武田邦彦著、幻冬舎新書、2011年4月25日発行、第5刷、251ページ、760円+税)
デニマルさん:6月号
先の東日本大震災以来、日本だけでなく世界中で原子力発電に関するあり方が見直されようとしている。所謂、原子力発電の安全性に対して、どう対処するかエネルギー問題の課題解決である。現在、日本の電力エネルギーは原子力(27%)であり、石炭(27%)天然ガス(23%)、石油(11%)、水力他(11%)と本書で紹介している。問題は、地震大国の日本にあって原子力発電の安全性がどう担保されているかである。電力エネルギーは、必要性に対して安全性、経済的得失、環境保全、安定的供給性等を考えると、何を優先的に解決させるかが問題である。この本は、大震災前の2009年に書かれたが、原子力だけでなく食料を含む多くのエネルギー源に触れている。著者は、資源材料工学の専門家で原子力安全委員会の委員でもあり、原発の安全性から将来エレルギー源も含め種々研究し、現在の日本の置かれた環境から解決すべき問題点を端的にまとめている。だが、本書で「エコ」「省エネ」が「反エコ」「反省エネ」であると指摘しているが、このご判断は読者にお任せしたい。
原子力エネルギー(原子力発電) ―― 原発は安全である? ――
今回の大震災で福島原発が津波に襲われ、原子炉の放射能漏れの事故に発展した。しかし、日本には現在54基の原子炉があり、全体電力の27%が賄われている。本書では、「地震国・日本の原発は、安全だが安心できない」と書いている。日本の原発は「軽水炉」だから安全であるが、地震は止められないので耐震対策が万全でないと安心できないと指摘していた。今回の事故でこのことが証明され、抜本的なエネルギー政策の再検討が必要となった。
石油エネルギー(火力発電) ―― 石油は30年で枯渇する? ――
石油は、1970年代のオイルショックでエネルギー源としての重要性を再認識した。当時、石油は30年で枯渇すると言われていた。しかし、あれから40年後の現在、未だ枯渇せずに顕在である。だか、産油国の政治・経済上の戦略的問題から価格上昇が続いている。現在の石油は火力発電で11%依存しているが、ガソリンや灯油、医薬品、衣料等に利用されている。著者は、液体石油に代わる類似石油資源をどう活用するかが問題だと指摘している。
太陽光エネルギー(太陽光発電) ―― 天然エネルギーのホープ? ――
最近、太陽光エレルギーが注目を集めている。ソーラーハウス等で太陽光を電気に変えるには、太陽光パネルと蓄電技術が必要である。太陽光発電は、経済効率と馬力を考えるとガソリンや電力に及ばないが、風力や地熱等の天然エレルギーに比べ実用性が高い。一方日本には海洋資源が豊富にあり、この資源を活用する方法が必要であると著者はいう。石油や原子力に代わる資源として利用出来れば日本の将来は明るいのだが、どうであろうか。
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