リレー随想
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プロジェクトマネジメントにかける想い

アイアンドエルソフトウェア株式会社 代表取締役 吉岡 朗: [プロフィール] :3月号

 弊社は、1989年創業の独立系の受託開発中心のソフトハウスです。互いに技術者であった現専務と仲間を誘って立ち上げた会社で、おかげさまで、今年で創業以来22年、技術者も百名以上を有するところまで辿り着きました。しかし、これまでの道のりは決して平坦とは言えません。
 独立当初、名前も信用もない私たちにいただける注文は、納期面でも採算面でも厳しい仕事ばかりでした。それでも、会社を続けるために社員と共に歯を食いしばってプロジェクトを遂行してきました。しかし、悲しいかな、ソフトウェア品質に対する知識やスキルに乏しく、また、プロジェクト運営についてのノウハウも経験もない中でのスタートであったため、最初の10年は試行錯誤の連続でした。稼働時間ひとつとってみても、限界を超えるようなプロジェクトを何度も経験してきました。
 もっと合理的なプロジェクト運営をできないか。極端に稼働時間をあげることなく納期を守ることはできないか。バグ発生によってお客様にご迷惑をかけたり、手戻りが発生したりすることを防げないか。
 私たちは、藁にもすがる思いで吸収できるものは何でも吸収しようと真剣に取り組んで参りました。日本プロジェクトマネジメント協会にも2004年から参加させていただき、様々なセミナで社員一同勉強させていただいております。
 現実・現場の課題を解決しつつ、様々な勉強をしてきて想うところは、理想のプロジェクトマネジメント、最高のソフトウェア品質は、一朝一夕には実現できないということです。たとえ素晴らしいお話をセミナで伺い、参考書籍を熟読しても、常に実践できるようになるには、大変な時間と努力が必要であると思っています。
 また、そもそもソフトウェア開発の仕事を、どのような時間軸で考えるのかという点も大切だと思っています。家にたとえて言うなら、安普請の10年程度しかもたない家を建てるのか、それとも、30年、50年と、少し手を入れればずっと住み続けられるような家を建てるのかという点です。私たちは作り手の責任において、常にロングスパンの時間軸でモノづくりを考え、お客様の最上級のご満足を追求したいと思っています。そのためには、しっかりとしたソフトウェア品質とプロジェクトマネジメントが不可欠であり、それを実践する人材育成が重要であると考えています。
 目に見えないソフトウェア製品の品質向上やプロジェクトマネジメントの取り組みは、ハードウェアのそれに比較してまだまだ不十分な面があると思っています。日本プロジェクトマネジメント協会の活動によって、ソフトウェア製品の品質やプロジェクト運営がますます向上・発展することを願って止みません。
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