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ICTふるさと元気事業における地域社会リーダ育成(その_1/3)
― 総務省および参加地方自治体における高齢者支援事業概要 ―

シュアティ・マネジメント協会 理事長 佐藤 唯行 [プロフィール] :1月号

■レポート要旨
 2010年9月より愛知県内の六つの地方自治体において、情報通信技術(ICT)を用いた高齢化社会に対する具体的な地域活性化事業が始まった。その初期段階において、事業を推進する地域に密着した地域活性の為のICTリーダの候補者である参加地方自治体職員、赤十字社や社会福祉法人などの地域福祉事業者職員、地域のNPO法人や自治会およびその他の地域自治組織の役員など約100人の方々に対して、『高齢者がIT(情報技術)を活用することで、社会及び地域との関係を深め、生きがいを見出し、元気なふるさとを創る』をテーマに育成プログラムを開始した。筆者はその育成プログラムの企画および講師を務めている。
 その事業内容およびリーダの育成状況を3回のレポートに分けて報告する。今回はその第1回である。

■ふるさと元気事業の背景と目的
 日本社会の少子高齢化がもたらす影響や課題が議論されて久しい。その間、具体的な対応策を講じることなく時は進み社会のあちらこちらで、少子高齢化がもたらすさまざまな問題に直面している。社会保障制度の持続可能性、医療保険制度の維持可能性、年金制度の存続可能性などが代表的なそれである。また近年ではこれに加え、単身世帯の著しい増加、人口減少という現在の日本の社会制度に考慮されていないような現象をも直視しなければならない状態になっている。しかしながら、どれも具体的な解決策を見出すこところにまでは至っていない。そこで今回、このような現在および将来の不安に対して、総務省および参加地方自治体により『ふるさと元気事業』が提案された。その目的は『ICTを利活用した取り組みを促進・支援することにより、地域サービスの維持・向上とともに、地域雇用を創出し、一般的に情報弱者と呼ばれる高齢者を加齢による視力、聴力などの身体的な状況を考慮する中で、行政情報、安否確認、生きがいの創出などの高齢者特有の課題を、ICTを利活用することにより解決し、高齢者福祉をより一層充実させること。』としている。

■ふるさと元気事業の概要
総務省と愛知県内の六つの参加地方自治体(豊川市、蒲郡市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村。図1の黒破線内の隣接した地域。以下は参加市町村と略す。)は、ソフトバンクモバイル社から2010年発表された米アップル社製iPhone4を活用した高齢者支援サービスを構築し、その事業体として総務省と参加市町村からなる協議会と実働組織である『ふるさと元気センター』を立ち上げ、2010年9月からの運用を開始した。 具体的にはiPhone4を活用した『ふるさと元気端末(図2)』を開発し、それをこの参加市町村内に在住されている80歳以上の高齢者を中心に約1000台を配布し、その端末の「端末IDを利用した認証」、「タッチインターフェース 」、「高齢者向けアクセシビリティ (Accessibility)(フォント)」、「ホーム画面の最適化」と「テロップ表示」、「音声読み上げ機能(Voice Over)」、「音声コントロール」、「ペアレントコントロール」、「GPS(位置情報)」、「ワンボタンカメラ」、「ビデオチャット」などの情報利活用技術を今回のふるさと元気端末の重要なICT技術とし、緊急時に容易に自分の位置情報も含めて緊急連絡できる機能や、要介護・要支援が支援してくれる人に定期的に容易に安否を連絡できる機能、自治体および地域支援組織から情報が送られ容易に確認できる機能、地域の高齢者が手軽に仲間を集うための機能などを事業開始時において用意した。その元気端末メニューおよび内容を表1に示す。
図1.ふるさと元気事業参加市町村
図1.ふるさと元気事業参加市町村

図2.ふるさと元気端末(iPhone4)
図2.ふるさと元気端末(iPhone4)

表1.ふるさと元気端末メニューおよびその内容

■育成プログラムの背景と期待
 現在進行しているふるさと元気事業は総務省による試験的取組み(プロジェクト)であり、期限までには予定されていたミッションを達成し終了する計画になっている。しかし、この事業が展開される参加市町村には、このふるさと事業を機会として『地域公共サービスの維持・向上』『高齢者福祉の充実』『ICTリーダ人材の育成』『地域雇用の創出』『委託事業の継承・維持・展開』などの狙いが存在する。まさに、『ICTふるさと元気プロジェクト』から『ふるさと元気プログラム』への飛躍である。
 参加市町村は今後、このふるさと元気端末を一つのコミュニティプラットフォームとして、ふるさと元気事業の目的でもある『高齢者がIT(情報技術)を活用することで、社会及び地域との関係を深め、生きがいを見出すこと』という価値の実現を地元地域において高度に実践できる人材が必要となってくる。そこで今後の地域社会のリーダの候補者には、サスティナブルな地域社会をマネジメントする方法を学び、そのリーダの方々が地域社会の高齢者の方々をリードして価値普及の実践が期待された。

■育成プログラムの概要
(対象者)
 当該地域における高齢者社会に貢献されている方々 :  100名程度(50名程度づつの2部構成)
   ・参加市町村(豊川市、蒲郡市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村)から選出された自治体職員
   ・各地域社会において中心的に活動されている高齢者
   ・高齢者サービス事業に従事者
(勉強会の形式)
 講師によるレクチャーおよび参加者全員によるワークショップを予定
 2回の勉強会に渡り地域社会にまつわる継続的テーマを予定
・テーマ1 :  地域のつながりを大事にする事業について考える (ふるさと元気プログラムと地域のコミュニケーション)
・テーマ2 :  地域に必要な価値を創造する事業について考える (ふるさと元気プログラムと地域の価値創造)

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