リレー随想
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日立の情報システム部門におけるプロジェクトマネジメントへの取り組み

株式会社日立製作所 外山 久: [プロフィール] :12月号

 弊社の情報システム部門におけるプロジェクトマネジメントへの取り組みについて簡単にご紹介させていただきます。
 弊社は明治43年(1910年)に創業し、今年で満100年という節目の年を迎えました。その間、さまざまな事業に取り組んできていますが、事業が広範囲にわたっていることもあり事業運営スピードを迅速化するため2009年10月よりカンパニー制を導入しています。現在7つのカンパニーがあり、私はそのうちの情報・通信システム社というカンパニーに所属しています。情報・通信システム社が取り組んでいる範囲は、ハードディスクやサーバなどのハードウェアや、ミドルウェア・通信機器などのITプラットフォームからシステムインテグレーションなどのソリューションサービスに至るまで多岐に渡っています。
 弊社の情報システム部門においては、1999年に現在でいうPMOに相当する部署が初めて置かれたのがプロジェクトマネジメント導入のきっかけになりました。それ以降、プロジェクトマネジメントに関するさまざまな施策を打ち出してきました。それらの施策は下記のように、導入期、定着・発展期、応用・改善期の3つの時期に分類することができると考えています。
1. プロジェクトマネジメント導入期(1999〜2001)
  プロジェクトマネジメント制度の整備……リスクアセスメント、スコープ記述書、プロジェクトマネージャ任命
  プロジェクトマネージャ育成制度の整備……PMP資格取得の奨励
2. 定着・発展期(2001〜2005)
  プロジェクトマネジメント制度の強化……リスクアセスメント項目の拡張、テンプレート提供
  プロジェクトマネージャ育成制度の強化……プロジェクトマネージャ認定制度、インセンティブ制度
  コミュニティ活動
3. 応用・改善期(2005〜)
  PM制度の更なる強化……成果物による進捗と品質の管理、チームによるPMの支援
  フェーズゲートの展開……フェーズゲートを中心とした組織的プロジェクトマネジメント
  超上流設計手法の強化……Exアプローチ
 もちろんこれらの施策は一朝一夕にできたものではありませんでした。1999年当時のPMO設立時メンバーはプロジェクトマネジメントの何たるかもよくわからず、まずはPMBOKを学ばなければならないということになりました。ちょうどその頃、エンジニアリング振興協会(ENAA)のもとで、現在のPMAJの前身である日本プロジェクトマネジメント・フォーラム(JPMF)が設立されました。当時はPMIの公式な日本語版PMBOKが発行されておらず、ENAAが発行していた和訳版PMBOKを参考にしてJPMFの例会やセミナーに参加しつつプロジェクトマネジメント制度の確立・改善を目指したということもあり、それは同時に我々にとってもプロジェクトマネジメントの出発点であったように思います。それ以来、PMAJのさまざまな行事に参加させていただいており、特にPMシンポジウムは日本のプロジェクトマネジメントの最新動向を知ることができるイベントとして毎回大いに参考にさせていただいております。
 今後も、PMAJにはグローバルPM、メタPM体系、その他さまざまな分野に強みを発揮して日本のPM力の向上に寄与することを期待しております。このような活動を通して日本のプロジェクトマネジメントがさらに発展していくことを願ってやみません。
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