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「私たちのP2M (Project & Program Management )」とは何か、考えてみませんか
−ITプロジェクトのどこでP2Mが活躍するのか?−

渡辺 貢成:12月号

復習 第8回:ITプロジェクトのどこでP2Mは活躍するのか?
1. IPAが示した図「超上流をIT化する勘どころ」では、発注者の経営者または経営企画者がビジネス要求を示すことになっている。P2MはPM発注者のために創られたPMであり、以下のことで発注者に貢献できる。
  1) 発注者が自らおこなう構想計画で、自社のビジネス要求の策定に貢献できる
  2) P2Mはスキーム・モデル(構想計画)、システム・モデル(システム構築)、サービス・モデル(運用)からなり、構想計画の策定でベンダーがシステムを構築しやすい要求を提供する。
  3) ベンダーは顧客の要求に従いシステムを構築するが、運用で必ずしも計画通りの効果を発揮できるとは限らない。サービスモデルは発注者にとって、所定の収益を生み出し、このIT投資を回収する場でもある。P2Mはサービスモデルを重要視している。システム運用時に更なる工夫を凝らすことで、よりよい成果が出るサポートを行うことで種々の価値を生むことを求めている。
  4) 構想計画においてこれらの仕組みをつくるのがP2Mのプログラム統合マネジメントである。これはイカニシメス4つの機能を持つ。
・経営の見える化と課題摘出をするのがミッション・プロファイリングである。
 摘出した課題群は複数のプロジェクトとして採用され、問題解決に寄与する。
・戦略マネジメント:プロジェクト間の優先順位をきめる
・アーキテクチャ・マネジメント:環境の変化による不確実性を吸収する設計思考
・アセスメント・マネジメント:意思決定を行う価値基準を提供する

 2. P2Mを学ぼう
2.1 発注者は構想計画から始めよう
  1) 戦略と構想
  2) P2Mの特徴
  3) ITプロジェクトのどこでP2Mが活躍するのか?(前回はここまで)

第9回 12月号はここから始まる
  4) 発注者が求めるプロジェクトの見える化をしよう!
前回説明した図8.2 IT経営ロードマップ2008年をベースに業務改革を含むITプロジェクトの見える化をする。これまではソリューション・パッケージを導入し、即ITシステムを構築し始めた。IT経営ロードマップではこれが間違いだといっている。業務改革とは何か企画者とシステム構築後それに従って実行する業務遂行者(現場)が、改革の内容を理解し、実現の可能性について議論し、合意に達しないと、改革は絵に描いた餅になってしまう。議論するためには「改革の中身を見える化」しなければならない。見える化をすると問題が解決するかといったら大違いである。日本人は特に自分達の仕事に誇りを持っている。簡単に仕事のやり方を変更することに抵抗がある。変更するにはするだけの理由がないと難しい。
日本企業は国内市場が大きかったために国内市場での競争に明け暮れてきた。国内企業同士の足の引っ張り合いに血道をあげてきた。気が付いてみれば、内輪もめをしているうちに、中国が製造業で格安の成功を収め、中級品以上では韓国がグローバル視点での経営をおこない、大きな実力をつけてしまった。日本企業が国内市場で泥仕合をしたいなら現状のままで業務改革の必要はないが、国内の顧客しか知らない人々は業務の仕方を変えたいと思っていない。現実とは別に全く危機感がないといえる。韓国との落差がどれほど大きいか知らないからである。ここではグローバル競争に勝つための業務改革ということを念頭に業務の見える化を進めてみる。
 今月はこの「業務改革の見える化」をP2Mのミッション・プロファイリング手法を使って話を進めるが、まずは、一般論で話を進め、最後に業務改革の見える化にはいる。

 4.1 一般論としての見える化
 図9.1は求めるプロジェクト(或いはプログラム)計画の見える化図である。
P2Mの用語で言うとプログラム統合マネジメントのミッション・プロファイリング(プログラム使命の見える化という意味)である。
  1) ミッションプロファイリング・プロセス構成図の説明
ミッションプロファイリングとは簡単に言えば、このプログラムの使命・目的・目標を探すことである。使命・目的・目標とは何か?わかりやすく言うと、「何をしたいのか(使命)」・「何のために(目的)」・「何ができたら成功か(ゴール)」である。
何をしたいのか「将来のあるべき姿(To be)」を示すことである。
自らがしたいことに対し、現状はどの程度のレベル「「ありのままの姿(As is)」を知る。
二つの要素を理解し、「あるべき姿」と「ありのままの姿」の落差を認識し、やりたいことの落としどころを決めるのが、ミッションプロファイリング(見える化)である。

ここでミッションプロファイリングの手順を図9.1に従って説明する。
i ) 経営理念・戦略・使命
プログラムは経営理念・経営戦略・使命から出発する。経営理念は固定的なものであるから、経営戦略から出発すると考えてよい。
ii ) プログラムオーナーの大まかな意図の確認
プログラム・オーナーとはプログラムの仕掛け人である。誰か仕掛け人がいないと仕事は始まらない。通常仕掛人は、事業部長や企業のオーナーの場合もあると想定した図である。
図9.1 ミッションプロファイリング・プロセス化構成図
図9.1 ミッションプロファイリング・プロセス化構成図

プログラム・オーナーは通常多忙である。成功のポイントは知っているが、現場を含めた業務の詳細には詳しくない。そこで経営企画のミドルとか、プログラムマネジャー候補がヒアリングをしてプログラムオーナーの意図を6W1H的にヒアリングして纏め上げる。

iii ) 「あるべき姿(To be)」と「ありのままの姿(As is)」を求める
ここでの作業手順はプログラムによって異なる。
 A. 「何をやりたい(To be)」か、ある程度見えているプログラム
  ・ 競争相手に追いつくか、それ以上のことをしたい場合等が考えられる。また、パッケージソフトを導入したい場合である。
このケースでは第一に「あるべき姿」を明確に描き、プログラムの使命・目的・目標を仮設定する。
次に、やりたい事柄に対して、現状の「ありのままの姿」を調査し、問題点の把握を行う。
両者の乖離の程度を見極めて、「ありのままの姿」から「あるべき姿」に到達するための複数の課題を確認する。
課題群をプロジェクト群と認識すると、全体がプログラムとなり、ここの課題群がプロジェクト群となる構造が構築される。
現状から目標に到達するまでのロードマップを複数のシナリオとして示す

 B. 現状の「ありのままの姿」から問題点を探索し、問題点の解消と更に高い「あるべき姿」を求めるプログラム
  ・ 会社再生のケース:例日産自動車
現状の「ありのままの姿」から探索した問題点を取り上げる
問題点を解消するための現実的な課題処理提案を行うことで「あるべき姿」を描き、使命・目的・目標を設定する
③、④、⑤は前者と同じである。
iv ) ミッションプロファイリングは「ありのままの姿」の問題点を識別し、洞察力によって「あるべき姿」を示し、実施するプログラムの見える化をする。
図9.2 ミッションプロファイリング策定図は
俯瞰力によって現実の「ありのままの姿」から問題点を捉えることを示している。
洞察力によって「ありのままの姿」から洞察力によって「あるべき姿」を特定することを示している。
「あるべき姿」と「ありのままの姿」との間に生じる乖離が、プログラムを遂行するための課題群として認識される。この課題群と「あるべき姿」がミッションプロファイリングにおける「見える化」である。
これらの課題群はプロジェクト群として認識され、このプロジェクト群を統括するのがプログラムである。
図9.2 ミッションプロファイリング策定図
図9.2 ミッションプロファイリング策定図

v ) 現実の「ありのままの姿」をどのようにして俯瞰するか?
次回新年号で俯瞰力について説明する。

12月号のまとめ:P2MはITプロジェクトのどこで使われるか?
P2Mの使い方についての説明に入った
P2Mのスキームモデルで構想計画を実施する際の手順を示した
最初がプログラムの「見える化」である。これをP2Mではミッションプロファイリング(使命・目的・目標の見える化)という
以上
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