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3) |
ITプロジェクトのどこでP2Mが活躍するのか?(図8.1、8.2参照)
図8.1 「超上流をIT化する勘どころ」IPA(情報処理推進機構)小冊子2006年から抜粋
図8.2 IT経営ロードマップ2008年から抜粋 |
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3.1) |
図8.1とP2M
図8.1はIPAからの抜粋した基本図(要件定義・仕様とテストの関係図)を加工し、関係者の役割分担を示したものです。
IPAはITの発注者(ITユーザー)に対し、自社のIT化に対する要求を①ビジネス(経営上の)要求、②ユーザー(ITを利用する部署)要求、③システム要求を提示することを示唆し、①は経営関係部門、②は業務部門、③はITシステム部門が実施することを示しています。このためIT関連の経営的責任者として各社はCIO(Chief Information Officer)
を設置しましたが、CIOの役割が各社によりまちまちで十分な責任が果されていないようです。図8.1はこの点を考慮し、経営部門、CIO,業務部門、ITシステム部門の役割を図中に示したものです。ここでCIOの役割をBA(ビジネス・アーキテクチャ)担当としました。
P2Mの活躍の場は図8.1に示すビジネス要求で、ここで活用されます。ビジネス要求はP2Mのスキーム・モデルにおける構想計画で識別されます。 |
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経営層(経営者、経営企画部門)の役割はビジネス要求の提示と、サービス・モデル(運用)で納入されたITシステムが初期の経営効果を発揮したかを確認し、更なる価値創出に指示を与えることです。
図8.1 超上流をIT化する勘どころ
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CIOの役割はEA(Enterprise Architecture )で示されるBA(Business Architecture)の役割をにないます。
従来は発注者が自社の要求をベンダーに任せていた点が問題視された結果です。日本のIT業界では大きな誤解があり、PMはPMBOKで、PMBOK の立ち上がりのプロセスが構想計画に当たると考え、堅実な構想計画を省略してきた経緯がある。
P2MはPMBOKで云うプロジェクトを効率よく行い、品質、コスト、工程管理するPMも大切ですが、プロジェクトの真の目的は価値を提供する成果物を作成するPMを中心に考えています。P2Mの構想計画がプロジェクト(プログラム)の戦略性、採算性、リスク管理、不確実性管理を含めて検討されることで、ベンダーへの要求を提示できるものと考えています。
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3.2) |
図8.2「IT経営ロードマップ全体図」とP2M
図8.2の説明をします。本図はITシステム構築に際し、従来から実施されていた手法の弊害を改めることを示唆しています。これは経済産業省が主催し、ITユーザーの経営者を集めた協議会を結成し、企業のグローバル化を目指したIT投資のあり方につき協議し、2008年に本案を示したものです。従来からの弊害とはソリューション・パッケージ導入の際に行われる習慣です。「世界で通用しているソリューション・パッケージを導入する際、パッケージはそのまま使える部分と使えない部分がある。そこで発注者の要求を聞き、パッケージの効果を生かすため、パッケージの主旨に従い、発注者が業務改革を実施してパッケージに合わせるか、現状業務に合わせて、パッケージを部分的にカストマイズする方式を採用するかを決める」。現実には業務改革の検討をすることなしにシステム導入が目的となり、IT導入の真の目的である、グローバル化に強い企業組織をつくるがないがしろにされた感があります。この結果がを考慮したものが本図です。
図8.2 ITロードマップ全体図
この現実に対し、経営協議会は反省し、IT化の前に、「業務改革に対する見える化」を行い、問題点の整理と、課題化に対するコンセンサスを得ながら業務改革の方針をきめる。その後に、IT化をすることを決めなさいと示唆しています。
この図は業務の見える化、情報の見える化をステップ1とし、ステップ2では全社レベルで、業務・情報の共有化を行う。ステップ3では社外との協調体制のために業務の柔軟化として業務やシステムのモジュラー化デザインを採用し、情報の交換、業務の協力体制ができるシステム構成を求めている。ステップ3でグローバル企業としての組織が構築されるという青図です。
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P2Mどこで使われるか?
この業務の見える化、共有化・柔軟化もP2Mにおける構想計画で、グローバル的諸条件を考慮した設計思想アーキテクチャが求められています。「見える化」の詳細は次回に行います。
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3.3) |
図8.3 「ビジネスとITの関係」
本年7月にCIOのための情報・経営戦略―ITと経営の融合―という本が出版されました。経営情報学会の力作です。
図8.3 ビジネスとITとの関係
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(1) |
情報システムとビジネスの関係 |
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① |
ビジネスはITシステムを牽引(drive)する
ビジネスがドライバーとして情報システムに目標を与え、実現された情報システムを駆使してビジネスを営む。 |
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② |
情報システムはビジネスが今までできなかったことを可能(enable)にする
情報システムがビジネスのイネーブラーとして、ビジネスのボトルネックをブレークスルーすることや、従来では考えられなかった新ビジネスの創出など、ビジネス変革のトリガーまたはシーズとしての役割を持つ情報システムがビジネスを支援する。 |
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(2) |
環境の変化へ適合ができる情報システム |
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① |
環境変化への適合 |
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② |
情報システムの複雑性 |
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③ |
レディネスとリアルオプション
今後起こるうる事態・状況に対し、場当たり的な対応を避け、情報システムが許容されるリードタイムの中で対応するには2つの方法がある。構想計画で予めフィージビリティースタディをしておくこと、第二が情報システムそのものを変化に適応できる設計思想(アーキテクチャ)で構築することである。
環境変化に適合できる仕組みを持つためにアーキテクチャからのアプローチとしての企業情報システム(EIS)都市計画アプローチがある。本書はこのアプローチとしてP2Mの活用を推薦しています。(参照第11章IT経営と企業情報システムアーキテクチャ) |