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「私たちのP2M」とは何か、考えてみませんか

渡辺 貢成:10月号

第6回:P2Mの大筋の話をしよう
1. 日本人もグローバルで通用する国際的発想、手法を学ぼう
  1) 契約というものの概念
  2) 構想計画は発注者が行う
  3) 適用するスタンダード(国際的に通用している標準)学ぼう
  4) Documentation 文章による証拠固め
2. P2Mを学ぼう
2.1 発注者は構想計画から始めよう
  1)戦略と構想(前回はここまで)

第7回 10月号はここから始まる
2) P2Mの特徴(図7.1参照)
P2Mは発注者のために創られたPM
P2Mは発注者ために開発されたPMです。その機能を発揮するためにスキームモデル(構想計画)、システムモデル(システム構築)、サービスモデス(運用・保守・ナレッジマネジメント)を一括して統括します。図7.1 参照
プログラム統合マネジメント(P2Mのユニーク性)
図7.1 プログラム統合マネジメント(P2Mのユニーク性)
このスキームモデルからサービスモデルまでを一貫して実施することで大きな価値をつくるところにP2Mの特徴があります。

スキームモデル:構想計画(発注者が実施し、プログラムを成功に導く)
プログラムは投資事業で、事業価値を創り出すのが目的です。スキームモデルは、その大切な構想計画をつくります。現在はグローバル競争がますます盛んになり、サバイバルのための計画をするのがスキームモデルの役割です。
慎重な構想計画は80%の確率で、プログラムを成功に導き出します。逆に構想計画を実施しないプログラムの失敗率は100%と言えます。

システムモデル:システム構築と構成管理(受注者が実施することが多い)
構想計画終了後計画は実施に移されます。システム構築には構想計画に比べて10倍以上の人手がかかります。ここは通常ベンダーに委託します。ベンダーはシステム構築のスキルを持つ人材を多く抱えており、制限された条件の中で成果を出します。ここでの重要事項は構成管理です。この期間は変更が多いという特徴があります。しかし変更はシステムの機能を発揮できるシステムの構成から外れることは許されません。変更管理は構成機能を損なわない範囲内で行う管理が求められます。日本では構成管理を単に変更管理と訳して、範囲外の変更を求める発注者が多い困った習慣がありますので注意してください。
通常のPM(事例PMBOK)は受注者を対象としたもので、その目的は効率的なQCD(品質、コスト、納期管理)業務を対象としたPMです。システムモデルはこれに類似します)

サービスモデル:運用・保守・ナレッジマネジメント(持続的可能な運用)
サービスモデルは構築したシステムを運用して、投資を回収する役割を持っています。構築されたシステムは完璧であるとはいえず、また外部環境の変化により、当初の計画と変わることもあります。企業はこの運用で予定より大きな収益をあげる努力と持続性可能な改善を行うことで投資効果を更に高めることができる。また、運用中に生まれた知識の再活用も企業能力の向上につながる。ナレッジの再活用は企業能力と社員能力の活性化に直結する。常時の絶え間ない努力は他社が追従できない企業力を生み出す意味でサービスモデルでの努力は価値獲得に大きく貢献する。

3) 経営に直結するプログラム統合マネジメント・構想計画の特徴(図7.2参照)
プログラム統合マネジメントの構想計画は「経営の見える化」をします。「経営の見える化」は4つのマネジメントで構成され、他のPMにない特徴を持っています。
ミッション・プロファイリング:「プログラム使命・目的・目標の見える化」(図7.2 2.1)
P2Mはプログラムの使命・目的・目標を決めるところからスタートする。経営を俯瞰し、現状の問題点(As is)を発見し、グローバル環境の中で自社のあるべき姿(To be)を洞察する。現状の問題点が多い場合は課題も多角化する。課題1、課題2、課題3を克服することでプログラム全体を処理できる。これらの課題群をプロジェクト群とするとプログラムはプロジェクト群の有機的な結合によってプログラム価値をつくることができる。
プログラム統合マネジメント4つのマネジメント
図7.2 プログラム統合マネジメント4つのマネジメント

戦略マネジメント:「課題処理優先順位の見える化」図7.2 2.3
戦略マネジメントは外部環境を眺め、戦略的に課題群の中から処理優先順位を決定する。手法はSWOT分析、ポートフォリオ分析が採用される。また、プロジェクトを分割モジュラー化することも考える。
アーキテクチャ・マネジメント:「環境変化への対応の見える化」図7.2 2.3
プログラムとプロジェクト群の構造化
ここではまず、プログラムとプロジェクト群の構造を決める。図7.2参照のこと
PJ-Aが終わるとPJ-Bが始まる。PJ-CはPJ-Aと同時にスタートする。
PJ-DはPJ-Cより少し遅れてスタートする。このようにプログラムとプロジェクト群の遂行順位を決めることで構造化ができる。
各プロジェクトの機能化
プロジェクト群はそれぞれ違う役割(課題)を持っている。この役割を機能と呼ぶ。個々のプロジェクトに機能を与える。その総合がプログラムの全体機能となる。
プログラム内のプロジェクト群の操作性とシナリオ
プロジェクト群の構造化と機能化が決まれば、その手順に従ってプロジェクトの機能を発揮していけば、そのシナリオに従ってプログラムは遂行できる。プログラムの操作性は戦略マネジメントにおいてプロジェクトのモジュラー化と優先順位の決定でシナリオ案がつくられ、アーキテクチャマネジメントにおいて最終的に確定される。
この操作性の目的は社会変化に対し、プログラムが素早く対応できる能力求めている。変化への追従性という従来のPMにない特徴をアーキテクチャマネジメントは持っており、この能力でプログラム価値の低下を防ぐことができる。

アセスメント・マネジメント:「意思決定の見える化」
 プログラムは価値を創出する事業である。価値とは何か。価値に対する評価基準があるから、価値が存在する。基準のない価値は定量的な評価の対象にならない。価値基準に対す、関係者が合意することによって目的とする価値が生まれる。プログラムの各段階での意思決定は各段階における価値基準にしたがって行うことになる。意思決定の見える化とは、言葉を変えると評価基準の設定といえる。
 P2Mではバランスの取れた複数の価値基準を提案して、ガイドブックに示してある。あなたはバランス・スコア・カードを基準とすることもできるし、ガイドブックに従うこともできる。また、チーム内で決定することもできる。いずれの場合においても事前に関係者の合意がないと成立しない。

11月号は統合マネジメントの詳細の話として、「実践的な経営の見える化」を詳しく説明すます。

10月号のまとめ
P2Mは経営者(企画者)のために開発されたPMである。
IT関係者はITの立場から経営を眺めているが、これではIT化のための部分しか見えない。プログラムは経営者としての立場で、顧客、競合者、自社を眺めないと「正しい見える化」ができないことを理解する必要がある。
近代の経営はスキーム・システム・サービスモデルを一貫して眺めることで新しいものが見えてくる
プログラム統合マネジメントはP2Mの中核である。経営の見える化から出発している。
4つのマネジメントはそれぞれの役割があり社会の変化の速さを考慮し、複雑で、不確実性の高い、しかし多くのチャンスをもたらすプログラムを用いて社会的に価値を生み出す機能を備えている。その意味でPMBOKとは価値基準の異なるPMである。
以上
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