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「私たちのP2M」とは何か、考えてみませんか

PMAJ理事 東京P2M研究会代表 渡辺 貢成 PMS:9月号

第1回:あなたはPMを誤解していませんか
第2回:世界はどのように変わっているのか(1)
第3回:世界はどのように変わっているのか(2)
第4回:世界はどのように変わっているのか(3)
第5回:P2Mはプログラムオーナー(システム発注者)のために創ったPM!

第6回:P2Mの大筋の話をしよう

(1) 第1回から5回までのポイントをまとめてみる
第1回: 発注者から見てPMは投資であり、価値を生み出すプロダクト(成果物)をつくることが目的ですよ。それはPMBOKのPMではありません。
その成果物で競争有利に展開するには、諸般の状況を考えた構想計画が必要です。それは他所で成功したパッケージを導入すればわが社でも成功するというものではありませんよね。
第2回: 諸般の状況を考えたとは何か?
インターネット普及以前をアナログ時代とし、それ以降をデジタル時代と考えるとき、デジタル化技術を有効活用した企業が成長していますよ。
米国は1980年代で日本に敗れた反省から、マルコム・ボルトリッジ賞を創設し、経営者の質の向上を図った。米国の優れた経営者はデジタル技術の持つパワーを理解し、製造業において日本が優位に展開していた「する合わせ技法」をデジタル化で解消し、新興国で安く生産できるノウハウを伝授し、日本優位であった商品を、コモディティ化することで低コスト商品の製造が可能となり、日本製造業を苦境に追い込み、リベンジを果した。
第3回: マルコム・ボルトリッジ賞以降の世界で、米国経営者はDBD(デジタル・ビジネス・デザイン)で、頭脳の品質改善に成功した話。この回はDBDの内容の簡単な説明をした。
日本の経営者は残念ながら、体質をアナログ時代のまま残し、表面的にITパッケージの導入で形を整えていたが、デジタル化の本質を未だに理解できないでいる。
第4回: 過酷な条件で経営をしていたメキシコのセメント企業の経営者(スタンフォード経営学修士)はDBDを活用し、経営をドラスティックに変え、M&Aで他の弱小企業を買収し、世界3位の規模にまで成長した事例の説明
第5回: P2M設立の背景、中国製造業の台頭を予測して、それに対抗するために、価値創出を求める発注者のためのニーズを満たすために開発されたPMがP2Mであること。その特徴を説明した。
第6回:P2Mの大筋を説明しよう
1. 日本人もグローバルで通用する国際的発想、手法を学ぼう
なぜ、このような馬鹿げたことを言うか、おわかりだろうか?
国際的に通用する発想に慣れると、日本式よりやさしく、短時間に仕事ができる。コミュニケーションも簡単になる。シェル石油と付き合っていたとき、自分が正しいと思っら、顧客不利な主張をしても、顧客は決して怒らない。
「お前の主張はわかった、しかし、これこれの理由で駄目だ」という回答が返ってくる。この5分で済む話が日本の顧客との会話はこのような直接的な話法はとらず、間接法で、しかも気づかせるという方法を考える。この準備だけでも数時間時、時に2,3日掛かることもある。
日本で、日本の顧客と接していくには、習慣を無視することはできないが、グローバルの手法を身につけていると、色々とアイデアも出るようになり、顧客も次第に我々の提案を聞くようになる。まずは発注者と受注者は対等であるという発想を身につけて欲しい。その意味でも契約を勉強しよう
1) 契約というものの概念
ビジネスは契約が成立して始まるということを理解する
契約で権利・義務が明確になる
契約はお互いの立場を尊重している(神の前に平等)
契約は発注者には発注者の行う権利と義務がある。受注者には受注者が行う権利と義務があり、決して代行できない内容が存在する
契約でカバーできないものが存在するときは、コンティンジェンシー予算を算出し、リスクマネジメントで、カバーすることができる。
契約はお互いの立場を保証している
契約には言葉の定義が必要である
契約のないリスクマネジメントは存在しない。すべてがリスクになるだからである
2) 構想計画は発注者が行う
自分の要求が何かわからないで、発注することはありえない。禍根を残すことになる。
ITプロジェクトで顧客はITに詳しくないから業者に依存するという声を聞くが、構想計画はIT化が目的ではなく、生産性を上げるには、業務のどこを改善するとか、顧客に価値を提供するのが目的であれば、どのような価値を提供できるかを考え、その中でIT化が効果のあるものを探し、IT化するという手順となる。目的が先で、ツールは後から考えること。(同時の場合もあるが、あくまでも目的優先である)
構想計画(スキーム・モデル)では投資効果を予測し、システムの運用(サービス・モデル)で成果の確認をすること。構想計画で目標とする成果をまずきめる。きめた成果がでたか、運用で確認する。構想と成果の一体化がP2Mの特徴である。
3) 適用スタンダード(国際的に通用している標準)
海外の業者に発注した際、どのスタンダードを採用するかを提示することになる。国際的に通用しているスタンダードは、それを使える資格者が多数いることが利点となる。困るのは社内スタンダードである。日本人のつくった社内スタンダードは寄せ集めが多く、論理に一貫性がないから、出来れば使わない。
また、日本国のスタンダードは外国勢力が日本に上陸できないような守りのスタンダードが多く、攻めの時代に適切でない面がある。
スタンダードを利用するのは国際的に通用する考え方で、記述内容は多くの権威の経験的チェックが行われて、信頼性が高いからである。
スタンダードを利用することで、人々はスタンダードのレベル(先人の経験をふまえたところ)から上の仕事を始めることができ、効率性が向上する
4) Documentation 文書による証拠固め
約束したことを文書に残す習慣
文書化されていないものは約束がなかったものと同じ。
文書化されていないものは、後で幾らでも主張を変えることができるから証拠にはならない。(日本の顧客にも書いて出して置くと役に立つ)
同じ言葉でも喋っていたときのニュアンスと文書化された内容は異なってくるから、文書化は、確認するための機会でもある

2. P2Mを学ぼう
2.1 発注者は構想計画から始めましょう

PMにおける業務責任領域

1)戦略と構想だ
 ビジネスは、まづ、戦略ありきです。戦略のない構想はありえないですよね。発注者が構想計画をしないのは真の戦う相手が見えないからではないでしょうか。日本の経営者は長年国内の競争者相手と闘って今日まできましたが、グローバルにいる競争者について、どのような作戦で競争に勝てるかわからないままのようです。
読者の皆さんに質問をします。皆さんはどのようにしてサムスンに勝てるか、作戦を立てたことがありますか。いろいろな人に聞いてみますが、答えが戻ってきません。
 答えが出ないようでは、戦略の立て方もわからないし、構想計画の立てようもありませんね。
しかし、日本のITベンダーはお客さんに対し親切です。「お客さんアメリカではこのようなパッケージで成功しています。これを導入しましょう。お手間は取らせません、構想計画などしなくとも、システムはお納めできます。私共は安くて早く仕上がるシステムを提供します」と卒なくシステムを導入してくれます。
ところが最近になって、導入したシステムでの経営効果が見えないという発注者の不満が広がっています。これがIT経営ロードマップ2008年です。
ところが驚いてはいけません。早速新しい「打ち出の小槌」を出してきました。そうです。クラウドの出現です。「お客様、クラウド様にお願いすれば、面倒な構想計画をしないで、安く、早くサービスがもらえます」という声が聞こえるようです。さあ大変です。
これが出てくると、当面誰もP2Mを見直してくれないというP2Mにとって大きな危機感があります? でも、本当にツールの導入だけで、御社の経営がよくなるならば経営者は不要ということになりますよね。
これって、何か、オレ、オレ詐欺の手口に似ていないでしょうか。

ここで、ふざけた文章を書きましたが、日本再建の道は厳しく、自分たちに何が不足しているかを真剣に考えるときが来ています。まだ、日本全体が現状を正しく認識できていないことを認識していただきたいのです。そしてアイデアを出してください。日本の持つ宝とは何か改めて、考え直してみましょう。日本には売れるものがたくさんあります。これらを再認識し、真剣に取り組めば、再度大きなブレイクスルーができると思っています。そのような気持ちで、次回のP2M講座を読んでください。
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