先回、リスクマネジメントにおいて物事の関係性を分析することが重要であり、ツールはそれを支援することを述べた。そこで本稿では、その関係性を分析することに関して、少し私見を述べてみたい。
何故、このようなことを考えるのか。よくチェックリストでリスクのチェックを行うという話を聞く。そこには、過去の失敗経験から導かれた質問が記述されているはずである。ただ、作業のチェックリストとリスクマネジメントで利用するチェックリストは、質問の仕方が違う。作業のチェックリストは、出来たか or 出来ていないかを答える質問だけでいいが、リスクマネジメントで利用するチェックリストはそうではない。例えば、顧客要求が不明確であったことから、要求されたものと違ったものを受け入れ時に指摘されやり直しが発生した事を考える。作業上のチェックリストであれば、「顧客の要求を顧客とともに確認したか」といったチェックで良いかも知れない。しかし、リスクマネジメントのチェックリストは、それでは意味がない。それは、リスクには原因があるためで、原因が存在するか、原因によって何が起きるのかを質問事項としなければチェックリストとして意味がないからである。そのような点において、物事の関係性(因果関係など)を理解しておくことは、リスクマネジメントを実施する上において,またツールを利用する際にも必要なことだと考える。
次に示す図は、プロジェクトが様々な要素や事象を含んだものであることを示している。リスクマネジメントを実施する際には、プロジェクトに関係する事象や要素の関係を分析し、不確実性を評価することが必要とされる。図に示されている分析されていない部分が多ければプロジェクトにとって問題となるリスクを見逃す可能性が高くなる。