PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(32)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :11月号

エンタテイメント論

第1部 エンタテイメント論の概要

15 TV放送とTV放送産業の実態
●スポーツからTV放送へ
 前号までエンタテイメント論は、スポーツの集大成として「オリンピック」と代表例として「ゴルフ競技」を対象に論じた。しかしこの他に日本人に馴染みの深い「野球」、「相撲」、「サッカー」、「テニス」、「水泳」、「アイス・スケート」、「バレーボール」など数多くのスポーツ競技がある。

 スポーツ愛好の読者のためには、もっと多くのスポーツ競技を取り上げるべきであろう。また日本や世界で活躍する多くのプロとアマの選手がどの様な「考え方」と「方法論」で競技に臨んでいるか、そして我々を如何に楽しませてくれるについて更なる議論を進めるできであろう。

 しかし本論の対象は、スポーツ競技ばかりではない。また紙面の制約もある。ついては筆者の独断でスポーツのテーマを一端終わりにさせて欲しい。そして今月号から「TV放送とTV放送産業」をテーマとして取り上げることをお許し願いたい。その代わり、議論すべき「スポーツ競技」の話題が生じた場合は、その時点のテーマに拘わらず、その内容を取り上げることを約束する。

 なお本論では過去にTV放送に極めて深い関係のある「映画」、「音楽」、「アニメ」などを取り上げた。その際、TV放送を取り上げることが出来た。しかし毎回、類似したテーマでエンタテイメント論を論じると、読者を飽きてしまう。また筆者自身も集中力を失う。そのため今後も、時々テーマの種類を変えることに理解を得たい。

●スポーツ競技の話題
 本号の原稿を準備していたら、ゴルフ競技の話題が飛び込んできた。上記の約束通り、取り上げたい。それは、2010年の愛知県愛知CCで開催された「日本オープン」である。

 金 庚泰(Kyung-Tae Kim 韓国)は、最終日、首位であった藤田寛之との4打差を物ともせず、ボギー無しの7バーディーでコース新記録64をマークし、藤田に2打差をつけ、13アンダーで逆転優勝した。そして石川 遼を抑え賞金ランク・トップになった。

 ゴルフ競技に興味がない読者でも「日本オープン」が何たるかは知っているだろう。これこそ日本のゴルフ界で最も権威があり、これを超えるゴルフ競技は存在しない。この日本オープンで何故金選手が優勝したのか。石川 遼選手を含め日本選手が何故、勝てなかったのか。その答えは極めてハッキリしている。本稿で何度も述べた通り、金選手は、韓国を離れ、日本や世界のゴルフ界で厳しい試合にいつも挑んでいるからである。一方日本選手は、日本の国内にへばり付き、世界の強豪相手と日頃戦っていないからである。
出典:金 庚泰(韓国)2010年日本オープン 日本ゴルフ協会のHP 出典:金 庚泰(韓国)
2010年日本オープン
日本ゴルフ協会のHP

●日本オープン
 しかし日本最高の競技である日本オープンに世界の最強豪が参加していない。何んと言うことであろうか。精神も、技術も弱い日本選手を相手に戦っても意味がないと思っているのだろう。はっきり言うと、なめられている様だ。しかも日本のゴルフ・コースは、世界基準に合致していない点が多い。そのことを知って、彼らは、日本での競技を敬遠しているのかもしれない。

 韓国には金選手の他に続々と優秀な選手が存在し、生まれている。金選手は、世界の強豪選手でもなんでもない。韓国のゴルフ場は、数も少なく、グリーンやフェアウエーのメンテナンスが悪く、公式練習日も普通営業のゴルフ場で一般客と一緒に混雑の中でプレーすると聞き及んでいる。その点でが日本選手は、韓国より遥かに恵まれた環境でゴルフを練習し、自国内の数多くのゴルフ競技に参加している。にもかかわらず、日本選手は、歴史と伝統の最も価値のある日本オープンで、束になって挑んでも、金選手に勝てなかったのである。

 韓国の男子選手だけが強いのではない。アン・ソンジュ、申ジェ、李知姫などの韓国の女子選手は、日本の女子選手を圧倒している。特にアン・ソンジュ選手は、すさまじい爆発力、精神的強さ、そして並はずれた技術力を持ち、宮里 藍選手や他の選手を全く寄せ付けない。男も女も韓国選手は、ひ弱な日本選手しかいない日本のゴルフ界を踏み台にして、がっぽり稼ぎ、虎視眈眈と世界のゴルフ界への飛躍を狙っている。彼らは、言葉も、習慣も、文化も違う国際社会の中で戦うことなど「なんとも思っていない」のである。

●日本オープンのTV報道
 エンタテイメントの観点から日本オープンをTV観戦していたが、全く面白くなかった。報道や解説がダメなためである。競技選手の戦い振り、コースの雰囲気、観客の息吹など全く伝わってこない。また解説者の解説に専門性、予言性、話題性が欠如していた。そして選手のその都度のプレー結果を解説するだけ。これなら誰でも解説者になれる。こんな情けない日本オープンの中継に日本のゴルフ界の指導者は何も不満を持たないのだろうか。

 またTV中継で石川 遼選手にやたらに焦点を置いて報道している。何か勘違いしている様だ。ゴルフ競技は、時の人を報道するニュース番組ではない。日本オープンを楽しく見せるエンタテイメントの観点からの報道が不可欠である。

 この勘違いは、石川 遼選手に対する評価から生じている。日本のゴルフ評論家、メディア関係者などが言わないことを代わって言おう。それは、石川 遼選手のためになるからだ。彼は、何度、賞金王を獲得しても、日本のメジャー競技に何度も勝つことが出来なければ、一流選手ではないということである。彼自身、気付いていると思うが、彼は、世界レベルでは全くの二流選手である。この様な考えに立てば、彼のみに焦点を置かず、他の優れた選手の競技振りを報道することになるだろう。いずれにしても、彼が今のまま、日本に留まり、チヤホヤされ、時々、海外遠征する様なやり方では、彼の未来は無い。彼に一刻も早く「日本を出て、海外に住み、世界で日々挑戦せよ」と忠告する日本のゴルフ界の指導者はいないのか。

●TV番組の概要
 先月号では、日本人の基本行動パターンとして「能動的生産活動(創造活動)」と「受動的消費行動(非創造活動)」に分けて余暇の過ごし方を論じた。このテーマは、後日再度論じることとさせて欲しい。ついては日本人の最も関心が高い日本のTV番組について述べたい。

 先ずTV番組とは、そもそもどの様なモノがあるかを最初に明らかにしたい。日本の放送法では、TV番組は、報道、娯楽、教養、教育、広告、その他と分類されている。また視聴率調査では、報道、教育、教養、実用、映画、音楽、ドラマ、アニメ、スポーツ、その他と分類されている。他にも様々な分類の仕方がある。しかし本質的に大きく違うことはない。この分類の仕方に関しては本稿の基本的テーマではない。ついては以下でどの様々なTV番組(広告放送などを含む)があるのかを順不同で述べたい。

●TV報道番組
 TV報道番組は、TV局が制作する番組である。それは、ニュース番組、天気予報、交通情報、ニュースショー、こども向け報道番組などが代表例である。また災害、大事故、政治スキャンダルなどを放送する報道特別番組や話題性の高いコトを扱うワイドショー番組がある。
出典:NHKオンライン・ニュース
出典:NHKオンライン・ニュース

●TVスポーツ番組
 これは、各種のスポーツの試合結果や今後の情報を伝える番組とスポーツ中継の生放送、録画放送、そしてハイライト試合結果放送などがある。

 前号まで、そして今回も「プロ・ゴルフ競技」の競技性、国際性、発展性、エンタテイメント性などを論じた。その議論の中で「TVゴルフ中継番組」の役割、面白さ、エンタテイメント性などをサブ・テーマとして論じた。日本や世界のプロ・ゴルフ競技を含む全てのスポーツ競技は、TVによる中継放送抜きにはその存在価値をアッピールすることは不可能である。

 TVスポーツ番組は、上記のTV報道番組と同じぐらいインパクトのある番組である。そして人々を楽しませるという機能性、エンタテイメント性は、他の番組を超える。

出典:テレビ東京の放送センター ゴルフ・ダイジェスト・オンライン
出典:テレビ東京の放送センター
ゴルフ・ダイジェスト・オンライン
つづく
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