PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(31)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :10月号

エンタテイメント論

第1部 エンタテイメント論の概要

15 TV放送とTV放送産業の実態
●スポーツからTV放送へ
 前号までエンタテイメント論の対象に、スポーツの集大成として「オリンピック」と代表例の一つとして「ゴルフ競技」を議論した。この他に日本人に馴染みの「野球」、「相撲」、「サッカー」、「テニス」、「水泳」、「アイス・スケート」、「バレーボール」など数多くのスポーツ競技がある。

 スポーツをこよなく愛する読者のために、より多くのスポーツ競技を取り上げるべきであろう。また日本や世界で活躍するプロとアマの選手がどの様な「考え方」と「方法論」で競技に取り組んでいるかを紹介し、我々をエンタテイメントしてくれる彼らのために、更なる議論を進めるべできであろう。

 しかし本論の対象領域は、極めて広く、スポーツ競技ばかり議論できない。また紙面の制約もある。そのため筆者の独断で「スポーツ」のテーマを一端終わらせ、今月号から「TV放送とTV放送産業」のテーマにシフトすることをお許し願いたい。その代わり、取り上げるべき「スポーツ競技」の議論が生じた場合は、その時点で本稿の当該テーマに拘わらず、その内容を取り上げることを約束する。

 なお本論で過去に、TV放送に極めて深い関係のある「映画」、「音楽」、「アニメ」を取り上げた。その際に「TV放送」を取り上げることも出来た。しかしそれをしなかったのは、毎回類似したテーマでエンタテイメント論を論じると、読者が飽きてしまう。また筆者自身も集中力を失う。そのため急に「スポーツ」にテーマをシフトし、その後、TV放送に戻した。今後もこの様なテーマ・シフトを行うかもしれない。ご理解を得たい。

●日本人の余暇の過ごし方
 さて「TV放送とTV放送産業」の実態を論じるに先立ち、日本人の余暇の過ごし方について説明したい。このコトに関して数多くの機関が様々な発表を行っている。その代表例として「NHK放送文化研究所」の発表内容を紹介したい。

 それに依ると、日本人の好きな余暇の過ごし方は、第1位は「テレビ」を見て過ごすこと。男女、年齢を殆ど問わず、最も多い。第2位は「ごろ寝」すること。男性の中年層に多いことは理解できるが、女性の若年層に多いとは驚きである。第3位は「美味しいモノを食べる」こと。第4位は「DVD・ビデオ」を見ることである。

 しかし「新聞を読む」こと、「草木の世話」をすること、「スポーツ」を見ることなどは最近、減少している。「ショッピング」することは、女性で上位(女性の若年層第2位、中年層第3位)、男性は各年齢層ともベスト10には無い。「知人・友人とつきあう」ことは、男性中年層、高年層でもベスト10に無い。日本人の交際が極めて減ってる。「インターネットを使う」こと、「ゲームをする」ことは、若い男性に多い。
日本人の好きな余暇の過ごし方ランキング
日本人の好きな余暇の過ごし方ランキング 男女年齢別ベスト10

●日本人の行動パターン
 余暇時間に於ける行動パターンを大まかに「能動的生産活動(創造活動)」と「受動的消費行動(非創造活動)」に分けてみた。

 前者は、自分自身が他者(外部環境を含め)に能動的に働き掛け、新しいモノやコトガラを創造し、その技術を習得する様な行動をいう。具体的には、本を書く、雑誌に投稿する、論文を書く、ピアノなど楽器を習う、楽器を演奏する、歌を習う、歌を唄う、スポーツ技術を学ぶ、スポーツをするなどである。
能動的生産活動(創造活動)
 後者は、自分自身を他者(外部環境を含む)からの働き掛けに受動的に曝し、消費行動をすることをいう。具体的には、テレビを見る、ごろ寝する、美味しいものを食べる、DVD・ビデオを見る、新聞を読む、ショッピングをする、本を読む、映画を見るなどである。
受動的消費行動(非創造活動)
 上記の2つの行動パターンから日本人の余暇時間の行動を精査すると、日本人は、男女・性別の区別なく、殆ど後者の受動的消費行動(非創造活動)を行っていることが分かる。余暇時間に能動的生産活動(創造活動)に没頭している「趣味人」、「道楽人」などは極めて少ない。

 猛烈社員が多かった高度経済成長時代は、時間的な余裕がなく、趣味に打ち込めなかった。しかし低経済成長時代は、時間的余裕が増えたため趣味に打ちこめるはず。しかし実際は昔の方が、統計が少なく、推測の域を出ないが、趣味に打ちこんだ人が多かった様だ。最近の日本人の無気力、冒険嫌い、批判ばかりの無行動は、余暇時間の行動からも判断できる。

 ちなみに「健康増進&維持のための運動」は、能動的生産活動(創造活動)と言える。しかしその行動があくまで健康増進&維持という「機能追及」で「楽しい」というレベルに達していない場合は、直ぐに挫折し、運動を止めてしまう。従ってその場合は、能動的生産活動(創造活動)ではない。

●能動的エンタテイメント
 能動的生産活動は、創造活動である。「楽しくて止められない」という特長を持つ行動である。またそれは、自分だけでは実現出来ないものである。他者との対話、交流、コミュニケーションがあって初めて実現する。人は、「夢」のある、「楽しい」コトに挑戦する時、最大のパワーを得る。夢工学が教える「夢のパワー」を得るのである。

 余暇時間は、「夢」、「遊び」を実現する絶好のチャンスであり、「能動的エンタテイメント(下記)」を実行するチャンスでもある。趣味は、人生を充実させるだけでなく、自律神経を活発化させ、病気や癌に対抗できる体質を形成する。健康増進&維持のためとはいえ、苦痛しか伴わない「運動」は、百害あって一利なしである。

 何らかの趣味を習得し、それを他者に示し、他者を喜ばせることが出来れば(能動的エンタテイメント)、他者との対話、交流、コミュニケーションを更に活発化する。これは、言い換えれば、趣味を習得することで「本物のエンタテイナー」になることである。そして「真のエンタテイメント」を自ら実行することになる。「TV」を見るより、「ごろ寝」するより遥かに楽しいことではないか。

 ちなみに筆者は、仲間と一緒に「ジャズピアノ」を演奏し、お店に出演して、お客様を喜ばせ、自分も楽しんでいる。おまけにお客様から、また店主からビールや水割りまでご馳走になる。そして帰りにはギャラ(出演料)まで頂いている。申し訳ない限りである。従って是非、読者の方々も能動的エンタテイメントを実践することを薦めたい。筆者は、「申し訳ないことのお返し」として、「バイエル」が弾けなくても、「ジャズピアノ」が短期間で弾ける様になる良い方法を希望する方々に伝授している。
出典:東京倶楽部での筆者のバンドの出演風景 出典:東京倶楽部での筆者のバンドの出演風景

 余談であるが、ピアノは難しいというのはウソである。猫が鍵盤の上を歩いても、正確な音が出る。筆者がピアノを本格的に練習し始めたのは、50歳を過ぎてからである。若い頃は、ギター、フルート、サキソフォンを演奏していた。それらの楽器で正確な音を出でる様になるためには大変な練習を必要とすることを身をもって分かっている。もっともその楽器が「好き」であれば、練習は全く「苦」にならない。音楽の「楽しい」ことが支えになる。「好き」であることが「才能」であると説くことも「夢工学」である。
つづく
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