図書紹介
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「はやぶさの大冒険」
(山根一眞著、マガジンハウス社、2010年08月10日発行、第3刷、295ページ、1,300円+税)

デニマルさん:11月号

2010年6月13日のテレビ・新聞等は、「探査機“はやぶさ”が地球に帰還、回収カプセルを発見」、「60億キロの旅を終えて7年ぶりの帰還」、「神がかり的な帰還」等々を報じた。このニュースは、宇宙科学関係者だけでなく多くの人から「7年ぶりの帰還」を祝福された。その後の「はやぶさ」カプセル特別展示(宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の相模原キャンパスで2日間の開催)には、夏休みの親子ずれ等で3万人もの人が訪れたという。今回紹介の本は、その「はやぶさ」の2003年5月の打ち上げから2010年6月のカプセル回収まで、現地取材をされた著者が纏めている。特に、難しいロケット技術を分かり易く書き、更に研究に携わった方々のインタビューを入れた人間味のある本にしてある。更に「はやぶさ」が小惑星から標本を持ち帰るという重大なミッションを担って出発し、神秘に包まれた宇宙を7年間も飛び続け、無事地球に戻ってきたロマンを綴ったドキュメンタリーでもある。

「はやぶさ」とは何者?   ―― 小惑星探査機 ――
「はやぶさ」とは、宇宙の小惑星を探査する特別な探査機である。この探査機は、小惑星から表面物質(サンプル)を採取して地球に持ち帰るまで「自律航法」可能な機能(自動制御)を有しているが、1b強の箱型で510sと非常に小型なものである。これを打ち上げたロケット(M-V5号機)も従来の半分の形状である。この本では、探査機の名称が獲物を素早く捕獲する「鳥」、寝台特急の名称、戦闘機「隼」等の裏話も含め数多く書いている。

「はやぶさ」の行き先?  ―― 小惑星「イトカワ」 ――
宇宙は、太陽系(太陽と惑星、衛星)と多くの小惑星、彗星の小天体で構成されている。それでは、なぜ「はやぶさ」が小惑星を目指したのか。それは惑星が太陽系初期の物質を残していて、その誕生を研究できるからだという。当初目指す小惑星の名前は、仮称だった。「はやぶさ」打ち上げ後の2003年8月、国際天文学連合が『イトカワ』と命名した。これは日本のロケットの父、故・糸川英夫博士の名前からきていると著者は紹介している。

「はやぶさ」が戻ってきた?  ―― 日本の最新宇宙技術 ――
「はやぶさ」は、宇宙天体の30億キロ先の小惑星に接近してサンプルを採取して、地球に帰還するまで「自律航法」したのである。だからこの探査機「はやぶさ」には、最新技術を駆使した種々の機器が搭載されていた。軌道を修正するイオンエンジン(電気推進)、自動航法のカメラ、センサー、小惑星のサンプル採取のロボット等々。しかし7年間の長旅で何回も故障を繰り返しての帰還であった。その間の技術者の苦労とロマンも綴ってある。

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