「もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの「マネジメント」読んだら」
(岩崎夏海著、ダイヤモンド社、2010年06月23日発行、第15版、272ページ、1,600円+税)
デニマルさん:10月号
2010年の夏は異常に暑かった。新聞によれば、113年ぶりの記録で通年より2.25度(8月)も気温が高かったという。こんな猛暑の中でも夏の高校野球は、例年通りファンを楽しませてくれた。今回の本は、その高校野球をマネジメントの視点で纏めた小説である。この本は発売以来、今でも人気がある。毎年トーハン(本社:東京新宿)が発表している上半期ベストセラーでビジネス部門第1位(総合部門で4位)となっている。巷では、この本を「もしドラ」と略称する程の話題性が高くなっている。何故、この本が多くの人に読まれているのであろうか。先ず表題のミスマッチ(高校野球の女子マネジャーとドラッカーの経営論)にあるかも知れない。高校の女子マネジャーが野球を通じて、ドラッカーの「マネジメント」にチャレンジしている。それに青春小説と明記して、漫画チックな表紙である。内容は青春ドラマの中にシッカリとドラッカーの経営理論が分かり易く書かれてある。
野球部のミッション ―― ドラッカー「マネジメント」の基本 ――
この本の主人公(川島みなみ)は、自分の学校の野球部マネジャーになった。そこで企業経営の神様といわれたドラッカーの本からマネジャーの果たすべき役割を学んだ。企業も野球部も同じ組織体である。その組織を活性化させるために目的を明確にして、人(顧客と働く人)を力にするマネジメントの本質を知り、野球部の使命(ミッション、最終目的と目標)をシッカリ実践する。さて、その中味が何だったのかは読んでのお楽しみである。
野球部のマネジメント ―― 管理者と現場プレヤーの目的共有 ――
学校の野球部には、監督、選手、マネジャーと学校関係者がいる。監督や選手はプレーに専念して、練習に励んでいる。彼等は何のために頑張っているのか。ドラッカーは、「企業の目的は顧客の創造である」と書いているが、野球部の顧客とは何であるかを真剣に考えた。この野球部の目的を監督や選手が共有し、実践させるのがマネジャーの役割であると「みなみ」は理解した。そして野球部の顧客を認識した主人公が目的共有に動き出した。
野球部のイノベーション ―― 組織力と個人プレーを活かす術 ――
経営の発展には、技術的、組織的なイノベーション(革新)が不可欠である。「みなみ」は、野球部に於いても同じであると認識し、最終目標(甲子園で優勝するだけはなく、そこに至るプロセスの共有)を実現ための戦略を考えた。人の強みを生かして組織力を向上させることが、野球部の必勝に繋がると結論付けた。この本を読んでいくと「マネジメント」の本質が理解できるように構成されている。ドラッカー入門書として使えるいい本である。
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