リレー随想
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「プログラムマネジメント」の要点に関して

富士通(株) 今村 努: [プロフィール] :10月号

 今回、参加させて頂いた組込みシステム研究会では組込みシステムの特徴と課題、擦り合わせの要点、P2Mの活用、といった視点からプロジェクトマネジメントや人材育成のあり方をまとめるものでした。そんな中で、P2Mに関して多少勉強した経験がある私は、従来消化不良だった感があるプログラムマネジメントを中心に、組込みシステム開発への適用のあり方を検討しました。以下、その検討過程などご紹介したいと思います。
 まず始めに、組込みシステム開発プログラム像を具体的に捉えるため、組込みシステム開発の標準的な構造を複数挙げて、それをプログラムモデルとしてみました。下図はその一つで、シリーズ製品を順次開発するモデルです。
(注:この図は報告書に記述したものから少しモディファイしています)

 P2Mのプログラム定義では『プログラムは全体使命を実現する複数プロジェクトが結合した事業である』としていますが、上記のモデルにおいて全体使命は『シリーズ製品開発、量産、販売によるビジネス目標達成』と言えます。さらにP2Mでは『定常業務もプログラムに含まれる』事を特徴としていますが、組込みシステムでは量産、保守という定常業務は事業に直結する要素であり、重要なマネジメント対象であると考えました。
 さて、このモデルにおけるマネジメントの要点を経験的に挙げると、全体使命を企画時期に明確にして全部門が共有すること、各部門(プロジェクト)の役割分担やインタフェースを具体的に規定すること、アーキ設計等の前工程では後工程担当部門とも的確に擦り合せ(前向き擦り合せ)を行い、後工程になっての手戻り(後ろ向き擦り合せ)発生を防止すること、途中でリスク顕在化などから初期計画変更が必要になったとき、関係者間で協議し使命達成に向け最適な解決策を決定する等です。一方、P2Mではプログラムマネジメントの要点を、ミッションプロファイリング、アーキテクチャマネジメント、等に抽象化し知識体系化していますが、この内容を前述の経験で挙げたマネジメント要点と対応させると、表現は違っても狙いはほとんど一致していると再認識しました。
 以上より今回の報告では、P2Mのプログラムマネジメント体系にそって、経験から挙がった擦り合せ要点を分類、対応させ、P2Mに沿ったマネジメントの導入をご提案しました。実際の開発現場ではより複雑で多様な要素があるはずで、そのまま活用できる箇所は絞られますが、マネジメント充実のために参考にしていただければ幸いです。
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