例会部会
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「第141回例会」報告

PMAJ例会部会 中前 正: 10月号

 日頃プロジェクトマネジメントに従事されている皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 今回は、8月27日に開催された第141回例会についてご報告します。

【データ】
 開催日時:2010年8月27日(金) 19:00~20:30
 テーマ:「プロジェクトの成功」を達成するために、どうしたらよいか
      ~現場でのSIプロジェクトマネジメント~
 講師:富士通株式会社 佐藤義久氏

 はじめに、講師のご紹介をさせていただきます。今回の例会にご登壇いただいた佐藤義久氏(以下、「講師」と表現)は、富士通株式会社にて銀行勘定系・情報系システムの業務開発、インフラ環境、品質管理などを担当。同時にPM資格を取得し、社内PM講師として活動、また社外の共同研究の場でも活動されております。

 講演は、まず「プロジェクトの目標達成とはなにか」という視点に立つところからスタートし、徐々に「私たちプロジェクト・マネジャーはどんな思考を持つべきか」という命題に近づいていく内容でした。

 最初に、プロジェクトの目標達成について、講師は以下の4点を基本的な要素として挙げました。
要件(機能)の実現
品質確保(高品質の実現)
スケジュール確保(期限内での実現)
コスト確保(予算内での実現)
 この4点にプラスして、講師は重要なポイントとして、「プロジェクトメンバの目標の達成」を掲げました。プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトをただ進めていくだけではなく、メンバのスキルアップや満足感、個人の成長につながるように、マネジメントしていくことが大切である、という考え方です。

 次に、プロジェクト・マネジャーに必要なスキルとして、以下の6つのエリアを挙げました。
1. 「マネジメント要素の知識」…統合マネジメント、スコープ・マネジメントなど
2. 「ヒューマン系スキル」…コミュニケーション、メンバの動機付けなど
3. 「SI技術力」…業務系スキル、インフラ系スキルなど
4. 「マネジメント要素の実践」…WBS定義、進捗管理など
5. 「現場状況の把握」…現場主義、メンバのスキル把握
6. 「思考系スキル(人格・性格・資質)」…問題解決能力、リーダーシップなど
 そして、これら6つのスキルの中心に位置し、それぞれのバランスを保ちながら、プロジェクトを成功に導くものは「PMの強い信念」である、と講師は力強く述べました。プロジェクト・マネジャーが持つべき信念として、重要なことは以下の3点です。
(1) 「必ず成功・達成させる」という思い
何が何でもやると、真剣に思うことが大切。
(2) 「目的観」を見誤らない
プロジェクトが進むにつれ、計画書作成や進捗会議自体が目的化してしまう。そこに気をつけ、真の目的を見失わないようにする。
(3) プロジェクト(マネジメント)に対する思い
プロジェクト自体を好きになること、PMは面白い、と考えること。

 以上のように、プロジェクト・マネジャーが実現すべき基本要素から、プロジェクト・マネジャーとしての考え方、意識の持ち方へと、その理論の全体像を紹介したあと、個別のプロセスについて詳しい解説がなされました。スコープ定義、WBS定義、スケジュール作成など、プロジェクトの各プロセスで踏まえるべきポイントを解説する際、講師自身の経験も交えながら説明されたため、非常に理解しやすい内容でした。
 中でも、特に私が興味深く感じたのは、品質管理の例として「なぜなぜシート」というものが紹介された時です。発生した現象に対し、なぜこうなってしまったのか、なぜレビューの段階で気付かなかったのか、というように「なぜ」を繰り返すことによって理解を深め、対策を立てることができる。その手法について、実際に現場で用いているシートを用いて説明がなされたのは、私にとって非常に有益でした。
 最後に、コミュニケーションの取り方、メンバの動機付けなどの「ヒューマン系スキル」、そしてリーダーシップ、決断力などの「思考系スキル」について、詳しい説明がなされ、講演は終了の時間となりました。

 プロジェクトを成功に導くために大切なもの、それにあらためて気付かされた講演となりました。今回の講演を参考にして、一度、私自身が担当しているプロジェクトについて、各プロセスがおろそかになっていないか、そして「信念」を持って取り組むことができているか、じっくり振り返ってみようと思います。
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