リレー随想
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切手集め

特別顧問 宮川 秀眞 [プロフィール] :9月号

 小学生のころ、近所にかわいい女の子がいた。その子は、切手を集めており、なにかの折に見せてもらった。そこで自分も切手を集めだした。切手のことでその子と話せる機会がもてるという不純な動機からであった。苦労して三角形の切手を手に入れ、自慢して見せると逆に菱形のものを見せられたりした。
 切手は、ロ−ランド・ヒルという人が、「受取人払い」であったイギリスの郵便事業を「差出人払い」制度に改革するため、料金前納の証拠をどうやって表示するかを国民からアイデアを募集した結果、1840年に導入されたものであり、日本では、前島密によって、1871年(明治4年)に初めて発行された。
 さて、人から趣味について聞かれ、たまに、切手を集めていますと言うと、「私も小学生のころ集めました」とよく言われることがある。その言葉には「いい年をして、いまだに小学生のやることをしているのですか」というような軽蔑のニュアンスが含まれているのではないかと私は、感じる。従って、趣味について尋ねられると、「釣り」とか「読書」とか「酒」と答えることが多いが、時々、勇気を奮って「切手収集が趣味です」と答えることにしている。
 切手を集めて今でも良かったと思うことが二つある。一つは、切手を通じて、いろいろな知識を得ることができたことである。例えば、サンマリノなど普通ではあまり知ることのない国を覚えたり、大きな行事を記念切手を通じて意外と苦労なく知って、歴史にちょっと強くなるとかである。また、動植物や日本の国宝、国立公園、国定公園なども多く覚えることができた。
 切手の収集には、大きく分けて利用面からの収集(例えば、速達便で使用されたとか外国への郵便に使用されたとかの観点からの収集)と製造面からの収集(切手が印刷される紙の違いとか切手の穴の開け方の違いとかの観点からの収集)がある。私は、製造面からの収集をしているが、どちらの観点から収集しても、時間が必要なことである。まず、欲しい切手を手に入れるには、多くの切手店を巡回したり、オ−クションに参加する時間が必要だが、それよりも、入手した切手の分析・分類とその整理にはものすごく時間がかかる。このことが、他人に迷惑を掛けずに暇つぶしができるという二つ目の良い点である。
 今や、わが国は、超長寿国である。高齢化・少子化問題等があり、年金受給年齢の延長により働からなければならない年数が多くはなっているが、それでも、リタイア後の絶対年数は、増大していると思う。毎日が日曜日の老後をどのように過ごすかは、大変重要なテ−マであると考えているが、私は、この切手収集の趣味を続けることによって、楽しくやっていけると思っている。
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