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会話コミュニケーションの薦め

梶山 直希 [プロフィール] :8月号

 社会に貢献したいと、総合電機メーカに入社したのが26年前。以来、原子力発電所の新規建設プロジェクト業務を担当してきました。
 原子力発電所の新規建設プロジェクトは、プロジェクトの開始から終了まで10年以上、関連する機関や部門も多岐に渉っており、規模の大きなプロジェクトです。また、原子力という特殊な分野ですので、社内的な影響も大きく、プロジェクト担当者としての責任も重いと感じています。当然ながらプロジェクトマネジャが一人でできる範囲には限界があります。たくさんのプロジェクトステークホルダーの支援や協力がなければ成り立ちません。大切なのは、プロジェクトの目標達成に向けて関係者全員がベクトルを合わせて進むこと。そのためには良好なコミュニケーションを図り、お互いの信頼関係を築くことだと感じています。

 今回は、日ごろ私が感じている「会話コミュニケーション」について書いてみました。

1. 会話によるコミュニケーション
 大勢の人を動かすには、組織間の連携や情報の共有化が不可欠です。また、組織間、部門間の調整には、相互理解と合意が大切です。良く議論して相手に納得してもらうことが物事を円滑に進める秘訣だと思います。そのためには会話によるコミュニケーションでお互いの信頼関係を築くことが有効です。
 私は、「会話の多いプロジェクトはうまくいく。」と思っています。

2. プロジェクト遂行上の秘訣
 私が担当してきたプロジェクトは、関係する部門が多く直接関係する人たちは数百人に及びます。このような大きなプロジェクトでは、共通伝達事項や個々の指示・伝達事項が関係者に正確に伝わり、足並みを揃えること(ベクトルを合わせること)が重要です。それには会話によるコミュニケーションが有効だと思っています。書類やメールによるコミュニケーションも有効な手段ですが、場合によっては一方的な指示・伝達になってしまい、これだけでは必ずしもうまくいきません。
 会話をして、こちらの意図を伝え、相手の状況を確認しながら仕事を進めていくことがプロジェクト遂行上の秘訣だと思っています。

3. 良好なコミュニケーション
 良好なコミュニケーションを図るには、積極的に会話することだと思います。特に、プロジェクトを担当する人材としては、話すことはもちろんですが、聞くこと(聞いてあげること)が重要だと感じています。聞いて状況を理解し、判断すること。
 相談を受けたら、自分の考えをタイムリーに返してあげることが大切です(私は、相談に来た人にはその場で必ず自分の考えを返すことを心がけています)。困った話、悪い情報をいち早く相談に来てもらえるようになれば、信頼も深く、良好なコミュニケーションが図れていると言えます。
 相手が困っているときにいかに力になれるかが、その人の(プロジェクトマネジャーとしての)力量ではないでしょうか。

4. 会話を増やす
 私自身、原子力発電所建設のプロジェクトを一貫して経験できたことは大変貴重な経験だと感じています。大切なのは、お客様も社内も、理論や理屈で押し通すのではなく、相互理解で信頼関係を築くことだと思っています。また、プロジェクトマネジャの育成には、P2Mで習得するプロジェクトマネジメント、使命やマインドなどの基本的な知識が大切です。しかし、それだけではうまくいきません。実践と経験によって人間力を醸成していくことが重要だと感じています。そして、その人間力を形成する一つの大きな要素がコミュニケーションですし、その中でも会話によるコミュニケーションが有効と感じています。
 皆さんは既に実践されていると思いますが、会話を増やすことをお薦めします。
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