リレー随想
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プロジェクトマネジメント実践

パナソニック システムネットワークス株式会社
 人事・総務センター 人材開発チーム 杉田 正: [プロフィール] :7月号

 みなさんこんにちは。パナソニックシステムネットワークス株式会社の杉田です。弊社はパナソニックグループの中でシステムネットワーク事業を担う会社です。私は本社部門で5年間人材育成を担当しております。
会社概要 どのような業務においても、基本的なスキルであるプロジェクトマネジメント(PM)の研修を、過去5年間で平均年間50回ほど開催してまいりました。

 私自身も研修の事務局や初級者向け研修の講師を担当しております。その中で初めて学ぶ方から、PMがよくわからない、わかりづらいとの感想をよく聞きます。わかりづらい理由を考えると、2点思い当たります。1つ目はPMの用語は3文字略語が多く、また抽象的な表現で理解しづらい点。もう1つは、PDCAをまわさなくても仕事はできるじゃないか、と思っている点ではないでしょうか。計画、チェック、対策案をつくらなくとも、個人のがんばりで終わってしまう仕事が多いのも事実です。特に事務部門の仕事がそれに該当します。「定性的な仕事だから」という訳でもないと感じていますが、事務部門の仕事にプロジェクト的な仕事が多いにも関わらず、計画を立てず、役割分担もせず、同じような資料を最初から作り続けているように思えます。
 しかしながら、多くの人が関わる仕事では、マネジャーが仕事の役割と進捗を管理すれば、遠目でみて1/3の時間で完了するような仕事が多いと思います。これが「PMの活用」の意義かと感じています。

個人の頑張りはもちろん大切ですが、それだけで仕事をこなしている人に、今更「PDCAをまわして仕事をしましょう、そこにリスク管理と創意工夫が生まれます」といっても、なかなか難しいと思います。そこで、私は新入社員の導入研修からPMを教えたらどうかと考え、本年度新入社員の24名に対し先日PM研修をおこないました。その名も「段取り強化研修」。@仕事に取り掛かる前に段取りを立て、A計画の精度を上げるために仕事の詳細化をして役割を決め、B最適な順番で仕事を遂行 というコンセプトで企画しました。

 研修は座学3日間とし、2日間はPMの基礎的なこと、特にスコープ、WBS、OBSをしっかりと教え、最後の1日は実習としました。その後は毎日1時間のグループワークを10日間行いました。実習のテーマは、PMの初級本では、大人数のバーベキューパーティなどを題材にしますが、今年の新入社員は10日間のベトナム工場製造実習が予定されていましたので、プロジェクト名を「ベトナム実習プロジェクト」とし、プロダクト成果物としては、「ベトナム海外実習のしおり・英語版」としました。

 PMが全く初めての人でも、プロジェクトを実感していただく為に講師、事務局側でスコープ、WBS、OBSのサンプルを作成しました。講師陣はパナソニック本社のPM研修の第一人者とPMO責任者と2名体制で行いました。この中で、私もひさしぶりに、WBSを作成しようとしましたが、やってみると、意外と難しいのです。特に、WBSを1つ1つ独立させるのが、難しく、書き始めると結構抜けがありました。またアウトプット文書が次のインプット文書になるのが書くときのコツかなと感じました。

 さて、初めてプロジェクトに取組んだ新入社員の出来はどうだったのでしょうか?案の状、計画に対して遅れ気味になります。原因は議論が白熱しコニュニケーションに結構時間がとられている点と、役割分担をしたのはよいが、重たい役割のメンバーだけが忙しく、後のメンバーが手持ち無沙汰の状態が結構あったようです。事務局側の意図として、計画をたて、実績をプロジェクトシートに記入し、出来なかった事を明確にして、なぜできなかったのか?まできちっと出してくれれば、OKなのですが、なかなか難しかったようです。しかし計画をたてたことにより、少なくとも計画どおりできないことがわかって「工夫し改善していこう」という気になってくれたようです。

 最後に、弊社の松下幸之助創業者はこう述べられています。
「額に汗することを讃えるのもよいが、額に汗のない涼しい姿も讃えるべきであろう。怠けるというのではない。楽する工夫をしろというのである。楽々働いて、なお素晴らしい成果があげられる働き方を工夫したいと言うのである。そこから社会の繁栄もうまれてくるのであろう。」(了)
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