今月のひとこと
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Project & Program Dynamics Management (P2DM)

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :7月号

 グローバル競争の掛け声の下に、PDCAによる「合理」のフレームワークが強化され過ぎたと考えます。結果として、日本の良さであった守破離による「情理」のフレームワークが失われ、日本的強みを損なっているように思います。この隘路を打開するためには、合理と情理のバランスをとり直し、その統合モデルに解を求めるべきではないでしょうか。以上の考察から、「PMの日本化」のモデルとして、Project & Program Dynamics Management(P2DM)を提案します。

1.Project & Program Dynamics Management (P2DM)
Project&Program Dynamics Management  P2DMは合理と情理の統合を目指します。つまりはPDCAと守破離の統合の概念です。合理と情理を常に相互参照し、表裏一体で運用することで、内外環境の変化に追随できる部分と全体の統合が図れると考えます。これにより、夢のあるビジョン構築と情熱に裏打ちされた目標設定及び目標へのコミットメントを獲得する共に、一人ひとりのモチベーション向上と仲間とのつながりによる知の連鎖で自己実現を可能にすることができます。組織にも個人にも受け入れやすいコンセプトであると考えます。ポイントはフィードバックとフィードフォワードを通じて、相互参照するための共創メディアの開発とそれを表裏一体で運用していくための共創プラットフォームの整備ですが、現在その開発を試みています。共創メディアとしては、ビジネスモデル、プロセスモデル、データモデル、開発方法論、プラットフォーム及び人材等が統合化され、整合性のとれたパッケージとして提供されます。それをRFP(Request For Proposal)をコアに具体化させようとしています。共創プラットフォームとは、顧客と一体となった要件開発と要件定義及び要件管理のための、ステアリングコミッティーによる構成管理の高度化の実践です。これをシステムとしてサポートするCMS(Configuration Management System)の開発もターゲットに入っています。このアプローチは、所謂アジャイル開発に近い概念ですが、それをプログラムレベルまで拡張したものです。アジャイル概念は本来、日本のモノ造りにそのエッセンスがあると理解しています。その意味で「PMの日本化」を指向するに、P2DMへの回帰は自然な流れと言えなくもありません。

2.統合モデルと価値創出
統合モデルと価値創出  「入口での価値創出」を狙うPDCAモデルでは、価値を計画に組み込むための高い戦略立案能力とその戦略を受入れ実現する実践力が問われます。 PDCAによる「計画‐実行型(Plan-Do)」のアプローチでは、計画からのずれに着目して実行を修正していきます。これは計画が正しいという前提に基づいており、計画策定時に正しい仕様定義ができるという仮定にたっている訳です。しかし、製品開発のようなイノベーション領域では、「計画時」ではなく「リリース時」に、その時点でのビジネス環境で競争力のあるプロダクトを市場に投入する必要があります。このためには「計画」から「リリース」に至る間の環境変化にも対応しなければなりません。
  一方、「出口での価値創出」を行う守破離モデルでは、プロセスの中で内外の環境変化にダイナミックに対応した、試行錯誤と創意工夫により、新しい価値を創出します。環境変化という客体の変化への対応のみならず、日々の活動の中で主体的な改善活動を組込み、守破離を通じて「日々成長した」個々人(主体)が価値増幅を図ります。この主体の変化も無視してはならないと思います。従って、この両方を統合するデュアルモードでは「入出口での価値創出」になる訳です。詰まりは、
「入口での価値創出(PDCA)+出口での価値創出(守破離)=価値倍加創出(デュアル)」
が可能になり、顧客満足ひいては競争力の向上につながると考えます。

3.結論
 近年、日本企業の強みが揺らぎ始めています。丁寧なモノづくり、商品開発力、生産システム、サービスの質など、高い競争力を持っていたものが失われつつあるようです。その原因はどこにあるのであるのでしょうか? その一つは、日本文化、日本企業の強みを支えてきた「守破離モデル」の喪失にあると考えます。欧米流の経営管理を学び導入してきたこれまでのやり方には、得られたものもありますが失ったものも大きいと思います。これをもう一度直視し、振り子のバランスを取り直して、デュアルモードで更に高みを目指すというのが先人の教えです。それには「PDCAと守破離」の統合モデルである、Project & Program Dynamics Management(P2DM)がその方向であると考えます。

以上
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