「グローバルPMへの窓」(第45回) P2M 厳寒のウクライナを駆け抜けたP2M その5
ウクライナP2Mシリーズは今回で完結となる。とは言え、ウクライナでのP2Mのプレゼンスはかなりの域に達しており、いずれまた報告が復活することになりそうだ。
この原稿をウクライナの首都キエフで書いている。異例のことであるが、厳寒の・・・とエッセイを続けているうちに、5か月で再びウクライナを訪れることになった。
今回は、ウクライナ政府財務大臣 Fider Yurashenko氏の直々の要請による財務省高級幹部向けのP2Mイノベーション研修開催が主目的である。
5月18日夜に森の都、ロシアの故郷、ロシア正教の聖地キエフに到着した。昨年12月にキエフを去った頃はヨーロッパを襲った寒波のなかで日中でもマイナス15度の日々が続いていたが、今回はほぼ初夏の陽気で緑も一段と映えている。
今回のウクライナサーキットは2日間のPM Kiev 2010大会から始まった。これはPMAJのパートナーであるウクライナPM協会の年次大会であるが、内容は学術会議で、招待講演者は教授(上級博士)、一般トラックは准教授〈博士〉、博士課程生と修士課程生のリサーチ成果あるいは中間課程の報告からなる。そのなかで私は大会主賓として特別枠の基調講演を行う栄誉に浴した。このため、恰好をつけるために、4月から頑張って68ページの “An Emerging Wave to Expand the National Industrial Competitiveness Using Open Innovation and Being Supported by Meta Program Management”という68ページのリサーチ論文を提出した。この論文はウクライナのいくつかのウェブサイトに掲載準備中で、また、ロシアPM協会のジャーナル(学術誌)にもロシア語化されて掲載されることになった。
ロシアなど隣国代表を含めて150名が参加したこの大会で何よりうれしかったのは、総報告数65件のうち、80%程度でP2Mへの言及があり、また、そのうち3件はP2Mの活用報告であったことで、この国でのP2Mの人気の高さを如実に物語っている。来賓のロシアPM協会のアレキサンダー・トブ氏はIPMAの副会長であり、招待講演で、本大会にはウクライナ協会の親戚代表としての立場で参加し、また、私にロシアでもP2M研修を実施してほしいと直訴しに来たと招待講演で語っていた。ロシアはP2M待ち行列で、アゼルバイジャン、カザフスタンについで3番目である。
今週は25日の大学でのセミナーに続いて、26日から3日間、財務省で、副大臣と局長全ての合計45名と、21の州の財務局長など33名を集めて講義1日・ビジネスゲーム(プログラムマネジメントのテーマワークショップ)1日からなるP2Mイノベーションセミナーを開催して無事完了した。
このような高級官僚が2日間席を離れることなく研修に集中することは信じがたいことであるが、これはユラシェンコ大臣御自らの強い思いで実現したものである。ウクライナでは、先の大統領選で、2004年のオレンジ革命で首相の座を退いたヤヌコビッチ氏が大統領となり、与党内閣が実現したなかで、オレンジ革命以前に財務大臣であったユラシェンコ氏が財
財務大臣に復帰し、前政府の放漫経営と世界同時不況でガタガタとなったウクライナ財政の再建にあたることになった。私の20年来のパートナーであるセルゲイ・ブシュエブウクライナPM協会長は、過去15年間国税庁の最高顧問も務めており、財務大臣の信任厚く、大臣復帰と共に大臣の主席顧問を務めている縁から、ブシュエブ会長と私が組んで、財政再建と強いウクライナ実現のために、大臣がP2Mの思想とコア・メソドロジーを基に策定したミッション、アクションロードマップ取り組みを配下の高級官僚たちに徹底することが目的であった。
研修はかなり活発に実施され、成果も出たとの評価をいただいた。財務大臣とは首相府で個別の会談を持つことができ、また、地域財務局長対象の2日目の研修中に30分の特別セッションを設けて大いにP2M路線を語っていただいた。
|
|
研修風景(地域財務局長対象) |
副大臣に研修修了証授与 |
そして、ウクライナP2Mサーキットはまだ続く、本日5月29日(土)つかの間の半日の休みの後、夜行寝台列車で西ウクライナ、ポーランド国境に近いリビブ市(750キロの旅)での研修に向かう、それを終えると、また夜行列車で黒海のオデッサ市経由前回の舞台であったニコラエフ市(リビブから1,100キロ)でもうひと講義を、そしてキエフに戻ってくる(700キロ)。
|
|
首相府7階(財務大臣フロア)からディナモ・ キエフスタジアム、ドニプロ河を展望 |
ロシア正教の首都であるキエフには壮麗な 尾大規模教会があちこちにある |
このシリーズ完 ♥♥♥♥♥
|