リレー随想
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「組込みシステム開発のP2M研究委員会」の方法

研究委員会委員長 金子 龍三: [プロフィール] :5月号

 学び方には@理論から学ぶ、A事例に学ぶ、B経験に学ぶ、C他社・他者に学ぶ、D歴史に学ぶがありますが、今回の「組込みシステム開発のP2M」研究委員会では、これらを併用して研究しました。
 @理論から学ぶ方法でP2M、組み合わせ・擦り合わせについては日本のもの造り哲学(藤本隆宏)を基に委員会の共通観の基礎としました。また、問題構造学(佐藤允一)を基に問題の種類、改善・改革のフレームワーク、そして擦り合わせ開発法にも二種類あるという研究成果を、プロダクトラインマネジメントの理論を前田委員から学び、組込みシステム開発のP2Mはプロダクトラインマネジメントの適用が不可欠であるという研究成果につながりました。
 警告書である「日本の技術が危ない(ウィリアム・ファイナン、ジェフリー・フライ)」からの、戦略性の欠落、システム技術の軽視、技術者と職人・テクニシャンとの違いが外から見た日本の本質的な課題であるとの指摘を基に、日本での組込みシステム開発のP2Mの成功のためには専門技術教育、特にシステム技術教育が重要であることを提起しました。その論点からプロジェクト規模の対応方法ではなく、プロジェクト・プログラムの難易度対応を主としたITSS、ETSSでのレベル5以上の研修の重要性を提起しました。
 A事例に学ぶ方法で、「2007年版組込みソフトウェア産業実態調査報告書」からは問題点を、そして今回の企業訪問調査からは先進企業の方法を、また、プロセス技術・マネジメント技術において海外のマネジメント技術の直輸入の時代は先端企業では終了し、日本化し始めているという研究成果になりました。コンサルティングを行っている委員からも直輸入で指導できたのは2005年頃で終了し、それ以降は日本での課題を発見し、課題達成技術、問題の未然防止技術に指導が移っていることが委員会で紹介され日本化を検証しました。
 B経験に学ぶ方法で、30年の組込みシステム開発経験のある委員他の実戦経験、コンサルティング経験を基に、組込みシステム開発プロジェクトでの様々な課題とプラクティスを提起しました。
 C他社・他者に方法で、日本のプロジェクトマネジメントの源流である飛鳥時代の寺院建築のプラクティスを宮大工の棟梁の書籍から、上級の専門家をマネジメントする方法を提起しました。また、それぞれの委員が過去・現在経験した海外企業との交流を基に多くの課題とプラクティスを提起しました。
 D歴史に学ぶ方法で、老舗の訓(鮫島敦)を基に日本企業の老舗の課題とプラクティスを提起し、孔子・荀子・韓非子・漢の高祖・明の太祖・楽毅から、人づくり人間学を主体に課題とプラクティス、特に上級プロジェクトマネジャーの人材育成法及びプロジェクトスポンサー・プログラムスポンサーの人財育成法の要点を提起しました。スポンサークラスの人財育成の実行が今後の課題でしょう。
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