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新しいリスク管理について思うこと

日立GEニュークリア・エナジー(株) 小澤 隆 (PMR) [プロフィール] :5月号

 私は、入社以来原子力ビジネスを推進しています。原子力ビジネスは、その他の産業に比べてプロジェクトが非常に長く、ビジネスそのものについても『特殊な産業』のように捉えられていると感じます。それゆえ、リスクについても他産業とは異質な取り上げられ方がされます。これまでは、一般に知られる原子力情報といえば、世界的な大事故以外は国内のニュースがほとんどであり、地震による被害、事故とは直接かかわらないものの事件として取り上げられるなどの漠然とした社会的な不安と言ったものが大きかったと思います。最近は、『原子力ルネッサンス』の影響で、海外における受注をめぐる報道が大きく取り上げられ、報道によって株価が大きく振れる現象まで見受けられるようになりました。そういう意味では、地味なインフラ産業と、華々しいグローバルビジネスの二面性が現れてきたと思います。
 プロジェクトマネジメントを学んだ方にとっては、海外におけるEPCの事例は、プロジェクトマネジメントを学ぶ題材で多く見ることができます。このような報道に触れた際、政情、労働環境、為替、治安といったカントリーリスクはどうなのだろうと感じた方も少なくないのではと思いますが、そこは社内プロジェクトだけではなく、公の場でも議論が活発になされているところであり、P2M的な考え方が浸透してきたと感じているところです。私も、プロジェクトマネジメントに、海外においては外的な要因に対するリスク管理が重要だ、と思っていました。

 一方、国内のインフラ産業においては、上記の外的要因より、自らコントロール可能な内的なリスク管理を行っていれば、安定したビジネスが可能であると思っていたのではないかと思います。プロジェクトマネジメントで重視するのは、主として進捗管理、コスト管理、変更管理、等など基本的なところが重要であり、そこをしっかりやっていけば、そこそこ利益が上がり、プロジェクトとしては成功と言ったところかと思います。
 ところが、昨年の政権交代後の事業仕分けでは、事業そのものの必要性が問われ、プロジェクトが突如として中止になると言ったことが起こるようになりました。したがって、プロジェクトの最初に、顧客だけではなくあらゆるステークホルダーを意識しながら、『関係性』を整理する必要があると思います。民民の取引では、自分と契約の相手方の関係がほとんどですが、公共では特に誰のためのプロジェクトか、誰に利益があり、誰に不利益があるのか、利益・不利益とも係らない人々はどう感じるかなども重要です。常に、公平性、透明性を意識しながら、無駄を排除していくことにより、プロジェクトの真の成功が見えてくると思います。
 P2Mの導入部分で学んだプロジェクトマネジメントの基本ですが、プロジェクトライフサイクルの内側だけではなく、プロジェクト開始前と終了後についてもよく考え、整理しなければならないと『実感』しているこのごろです。
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