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急激な環境変化にむけたP2M理論研究や実践の展開

PMR 石川 千尋 [プロフィール] :3月号

 私はIT業界において生産管理システム開発やソリューションパッケージの企画、ERP導入に従事し、現在では主に生産管理・原価管理領域を対象に、業務およびITでの問題・課題整理と改革・改善の方向性策定など、情報システムや業務改革の企画という顧客の支援をおこなっています。情報処理技術者試験“システムアナリスト”合格者の自己研鑽の場である日本システムアナリスト協会(当時。現在の日本ITストラテジスト協会)の会員として“ITと経営の橋渡し”について研究する中でP2MガイドブックとPMS試験開始の情報を得たことがP2Mとの出会いでした。P2Mは、事業家の立場で投資から回収までライフサイクルを意識し、欧米版PMを包括するという特色に強い関心を抱きました。PMS,PMRともに一期生として資格取得し、その後、P2M理論研究や実践での活用のヒントを得るために国際P2M学会に入会しました。

 国際P2M学会は、2005年10月30日に発足し、『わが国固有の風土から産まれた多様な技術システムやビジネスモデルにおいて得られた「プロジェクトマネジメント」の実務知見を活用するために、知識形式化をする』ことを目的に研究を進めています。学会には小原重信教授をはじめP2Mに関して先進的な研究を推進されている先生方や実務者などさまざまな分野でご活躍の方々が参加され、研究発表大会ではP2Mに関する各種テーマについて発表、討議が行われています。 来る2010年4月には通算第8回の開催が予定され、今回の大会テーマは「社会インフラ事業とP2M理論の適用」−持続的発展を可能にする社会資本整備への産官学の連携と期待−となっています。
 2007年から春季大会は「理論」、秋季大会は「実践」を中心とした年度2回の開催となり、研究発表の機会が充実されました。さらに今春2010年4月の春季研究発表大会より、「研究論文」「実践論文」の選択が可能となり、「実践論文」は“アブストラクト1枚とプレゼン形式”での提出が認められるようになりました。研究発表大会参加の目的は、実務家と学術界の方で異なっていますが、実務家、実践者の研究発表に適した形式が選択できるようになったことで、学術的な新しい知見だけでなく、実践に活用できる知識の共有の場としても研究発表大会がより活性化すると期待しています。

 昨年春の学会では研究者、実践者に対して、研究方向指針のために、イノベーションを促進し、競争力再生と人材育成に貢献する新たな仕組みを意図して「P2M Version 2.0 コンセプト基本指針」が発信されました。その中でIT構築におけるスキームモデル(事業構想マネジメント)は以下のように説明されています。(以下一部抜粋)“システムを導入する企業(オーナーの視点)では、フィージビリティスタディまたはビジネスデザインに対応する。同様に、システム構築を請け負う企業(受託者の視点)では、情報システム構築の超上流工程と呼ばれ、「システム化の方向性」「システム化計画」「要件定義」の順で検討を行う。ここで大事なことは、オーナーの示す経営戦略とICT戦略との整合性を考慮することである。” このように“オーナー視点”と“受託者視点”との両面で考える必要性・重要性について説明しています。また、“経営層との合意形成として、・期待する事業上の効果、・IT投資が生み出す効果、・効果を何で測るかという点が重要になる。”という説明部分は、実践に即活用できるように整理されており、実務で活用しています。
 情報処理技術者試験は、今年度から新制度となりベンダ側人材とユーザ側人材を一体化した試験体系に改められました。“IT産業、ユーザ産業ともに、ITを戦略的に活用できる人材が求められ、ユーザ側人材がベンダ側人材と同等レベルの知識・技能を保持し密接なコミュニケーションをとることが必要不可欠”であるという理由によるものです。これは、“オーナーの視点”と“受託者の視点”との両面で考えるP2Mの考えと通じるものと思います。

 リーマン・ショックに端を発する景気後退から抜け出した後の世界経済の姿を“ニューノーマル”と捉える考えがあります。以前の経済とは異なる姿という見解ですが、このような時代を迎えるにあたり経済環境や国際環境の急激な変化に対応するためには、プログラムマネジメントの考え方がますます重要になってくるであろうと考えています。すなわち、社会と技術に関連した複雑な問題に取り組むために、各種領域における専門家が知識を交流させ、それらを全体視点で調和させることが重要になるということです。そしてこの時期にこそ、P2Mの理論研究や実践をさらに推進していきたいと思っています。

ご参考
1.「P2M Version 2.0 コンセプト基本指針」国際P2M学会
2.「学会ビジョン」国際P2M学会
3.情報処理技術者試験センター WEBサイト
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