グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第43回)
P2M 厳寒のウクライナを駆け抜けたP2M その2

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :3月号

 P2Mを掲げて厳寒のウクライナを駆け抜けてから2カ月が過ぎた。
1月は小休止であったが、P2Mのグローバル化の波は引き続き大きくうねっている。
フィリピン商工会議所研修団  2月には、PMAJとしては海外向けの初めてのフルコースP2M研修となる、フィリピン商工会議所選抜研修生23名に対する研修を経済産業商の外郭団体である(財)海外技術者研修協会 (AOTS)から受託して行った。大変好評で、研修団が帰国する頃にはすっかりP2M教にはまっていた。早速、各企業・団体にP2Mを導入するにあたっての具体的なアドバイスをメールで求めて来ている。
 フィリピンでのP2M普及の道がついた。
 この研修については追って報告したい。

 フィリピン研修が終わったら、すぐに石川県の国立北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) での修士課程生・博士課程生に向けての上級プロジェクトマネジメント講義を  2月23日に行った。4名の先生で分担講義する英語の講義で、中国2名、ベトナム2名、日本2名、台湾1名の学生達はかなり高速の講義でもしっかりと食いついてきてくれた.
 エリート校であるJAISTは、当協会の初代名誉会長をお引き受け戴き、ナレッジ科学の世界の第一人者、野中郁次郎先生が初代の知識科学専攻科長であり、現在は、PMAJがプロジェクトマネジメントの初級・中級講義を開講しており、知識科学とPMの融合をJAISTとPMAJで目指している。

北陸先端科学技術大学院大学 SKEMA教務部長(女性)ご夫妻と箱根で
北陸先端科学技術大学院大学 SKEMA教務部長(女性)ご夫妻と箱根で

 昨日(28日)からは、これから東京で開催するPMI主催+PMI日本支部・エンジニアリング振興協会・PMAJ共同主催のアカデミックPMワークショップのため、新宿のヒルトンホテルに缶詰めとなっている。PMIが仲介者となり海外(米・フランス・カナダ)のPM教育先進校と日本の大学が出会い、相互協力の道を探るというものだ。

 さて、話をウクライナに戻して、P2M2009年12月の陣は、首都キエフでの2大名門大学での各々2日間のP2Mセミナー(4日連続)で始まった。
世界を股にかけて講演・講義を繰り返し、めったなことでは動じない私ではあるが、この4日間は、同国の名うての教授達を相手に論陣を張るということからストレスがつのり、4日目の講義が終わった時には胸筋が痛くなって、痛みは2週間消えなかった(2,002年に狭心症を患っており、心臓病の発作でないことは分かっていたが)。
 セミナーの口火は、筆者のウクライナの拠点である国立キエフ建設・建築大学(NUCA)をホストとしてものであった。
 NUCAは、70年前に、UAJCのウクライナ側のスポンサーであるKPI(下記)から分離独立して創設され、同国のプロジェクトの本流である社会インフラ構築と建設事業のプロジェクトマネジメント幹部養成とPMの研究で同国の圧倒的な地位にある。
 NUCAではマネジメント系の教授と学生が既にP2Mに取り組み中であり、また、P2Mセミナーも過去3回実施していることから、今回は、同学学部長のBushuyev先生が、財務大臣と国税庁大臣の意向を受けてP2Mを以て改革プログラムを推進中の国税庁の幹部職員がセミナー受講生の中心であった。他に、運輸・情報副大臣と科学技術庁学術局長といった国のリーダーも参加された(両名ともP2M資格を最近取得された)。
 いつものとおり、受講者の受講熱意、理解力、ワークショップ共に優れていた。

開会スピーチを戴いたNUCA学長(右から2番目) セミナー後にP2M国際資格取得のボリス運輸・通信副大臣に認定症授与
開会スピーチを戴いたNUCA学長
(右から2番目)
セミナー後にP2M国際資格取得の
ボリス運輸・通信副大臣に認定症授与

 開会式では、Anatoly Tugay 学長が、「日本とウクライナの長い友好関係、本学と盟友である田中弘教授との互恵関係を背景にして、このたびJICAウクナイナ日本センターが加わってP2Mイノベーションセミナーをウクナイナの主要都市で開催できることは大変意義のあることである。スターテォイングホストを務める私にとっても大きな栄誉である」と述べられた。
 また、8月にP2M国際資格を取得された、ボリス副大臣は、ワークショップの際には、自らチームリーダーを務め、P2Mプログラムマネジメントのミッションプロファイリングとアーキテクチャマネジメントを駆使してご自身が担当する海運高度化整備プログラムの骨子を纏められた。
 第2弾は、国立キエフ工業大学(KPI)で実施した。
 KPIは創立が1895年で、同国最大かつ最高位学府である。学生数4万人・教員数8千人・キャンパス面積は約3km x2km。UAJCのウクナイナ側のスポンサーである。
 本セミナーは、UPMA会長からKPI学長への要請に基づき、学長から学長直轄のSystems Engineering Instituteの全教授・准教授に出席命令が出て、40名が参加した。また、優秀学生10名が選抜されて出席した。
 最高学府だけあり、教授陣・学生共に素晴らしい集中力・理解力で、NUCAと異なり初めてP2Mに接するにしては、驚異的な受講パフォーマンスを発揮した。
 そのような中で、圧倒的多数の受講者がセミナー評価で最高の5をマークしてくれたことで、P2Mの潜在価値を再認識できた。
 同学にはウクライナの大学で唯一の正教授でウクライナ在住9年の松井先生(京大博士→原燃→ハーバード大学公共政策学修士→国際原子力委員会→ウクナイナの他の大学教授→KPI教授)が出席され、「日本にこのようなすばらしいマネジメント体系があることを知って目から鱗である」と発言された。
 また、Bushuyev教授の講義も大変好評で、益々プログラムマネジメントに興味を持ったという声も出た由。

ワークショップ成果発表後の教授・准教授 松井教授と
ワークショップ成果発表後の教授・准教授 松井教授と

 ワークショップでの各グループの発表への講師陣の突っ込みかたは、ロシア・ウクライナ流で迫力満点である。発表者はほとんど教授であるが、セルゲイ先生は、まずプログラムタイトルから噛みつく、「そんな戦術的なテーマではだめだ、もう少し、リッチな内容を想起させるタイトルにしなさい」、「ちょっと待て、それはPM的な発想であり、プログラムマネジメントではない、間口を狭めるな」といった調子である。筆者もウクライナ語の通訳を介して、気がついたことをどんどん指摘していく。とくにグローバルコンテキストに関しては述べに述べて、ウクナイナに自覚を促した。ほとんどアマチュアの教授がウクライナ最高学府のプロの教授に対して突っ込みをいれることは日本では考えられないことであろう。
 やられる方も、修士以上では、これがロシア・ウクライナ流であるので、突っ込まれも平然としており、適当に反論して次に進めていく。
 次号からP2M地方巡業がはじまる。♥♥♥♥♥

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