図書紹介
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「「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法」
(小林公夫著、PHP新書 、2009年09月09日発行、9刷、244ページ、700円+税)

デニマルさん:3月号

この本は、昨年出版され一時期話題になったことがある。話題のポイントは、ゆとり教育と学力と勉強の関係であったと記憶する。ゆとり教育は、2002年度から学校での授業時間の短縮と週5日制が実施された。この授業時間の短縮で生徒の学力がどう変化したか、教育専門家の間で種々論議があった。その結果は、OECD(経済協力機構)が学習到達度調査(世界各国の15歳の生徒を対象に実施)で世界的レベルの学力差が明確になった。ゆとり教育を受けた世代は、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの全て順位を落している。この学力低下は、ゆとり教育だけではなく一つの要因であると専門家は分析した。その為か文科省は、2008年に「ゆとり教育」を見直し、授業時間を増加した新学習指導要領に変更した。その時期に、この本が発売されたので教育に関心のある人の注目を集めた。内容は、ミクロな子供への勉強論ではなく、子供教育のあるべき姿を多面的に纏めている。

子供に勉強させる(親の役割)   ―― どうやって子供を勉強させているか? ――
この本で、勉強の出来る子や著者が中学受験で教えたお子さんの事例を紹介している。その共通点は、親が子供の自主性を尊重して応援に徹している。その応援も「子供の長所を伸ばし、短所を気にしない」寛容さと、子供が自分の目標を探すまで、ひたすら応援し続け気長に待つことを説いている。この『待つ』という親の粘り強い姿勢が、子供を育むと指摘する。だから口うるさく「勉強しろ」と言わずとも、率先して目標に向かうという。

子供に勉強させる(子供の役割)  ―― どうしたら勉強を率先してやれるか? ――
自分から率先して目標に向かう姿勢は親から学ぶと指摘し、そして子供自身の積極性や継続性を身に付ける方法を細かに書いている。この重要な点は、遊びも勉強も部活動も「楽しさ」を体で感じ、それを繰り返しながら習慣化させる。更に、身近な成功体験を積み上げ、失敗から学び、目標に向かって結果が出るまで「あきらめない」、粘り強く結果を出させ、結果を恐れないと書いている。これは子供ではなく親が率先すべきことかも知れない。

子供に勉強させる(教師の役割)  ―― 学校で子ども達に教えるべきこと? ――
この本には教師が生徒に勉強させることは書いてない。しかし、先のゆとり教育からも子供教育で学校や教師の果たす役割は大きい。著者は、親としての自分の子育て経験を披露している。その体験から教師は、学校での勉強以外に友だちを通じた社会性(具体的に、「正直である」「人との付き合い」「目標に熱中する」)を教える必要性を説いている。この問題は、学校だけでなく、社会全体で温かく見守る体制が求められていると締めくくっている。

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