PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (23) 
「国内プロジェクトと海外プロジェクトの主な相違点を学ぼう」 (2)

芝 安曇:2月号

 前回は国内プロジェクトと海外プロジェクトの相違点を述べた。自分は国内プロジェクト担当だから必要ないと思っていても、オフショアへの発注など、現在は海外との付き合いが身近な問題となっている。また、周囲で海外プロジェクトの経験者が増えてきた。彼らは海外プロジェクトで痛い目にあっている。これらの経験者は日本的な不明確な発想や、行動を決して評価しない。そして世界で通用する発想を持つことを願っている。
 今回は欧米的考え方を素直に勉強してみたいと思う。

1. 「企業は人なり」、「企業は組織なり」、どちらが正しいか?
 日本人のビジネスマンに上記の質問をすると「企業は人なり」が多い。この問題のどちらが正しいかを議論することは実は無意味である。正しくは「企業は人なり」、「企業は組織なり」双方のメリット、デメリットをあげ、どのような状況ではどちらが優位かという分析が必要である。ここでは時代、習慣、文化すべてを含めて考える必要がある。今回はまず、米国流の組織と組織運営の基本的ルールを学んでみる。
1)米国型組織
@ 企業組織は通常階層化されており、階層化された組織に階層化されたポストがある
A 階層は組織が大きくなるにつれ階層の段が増え。ポストが細分化される。
B 各ポストには役割が明記され(或いはその都度明確にする)、そのポストの就任者は決められた役割を実施することで業務が行われ、成果を出す責任を持っている(ポストの権限と責任)
C 性善説(リスクマネジメントに弱い)と性悪説(リスクマネジメントに精通):
ポストの役割と責任が明確なため、そのポストの役割を実行できる能力のある人材が選任される(適所・適材の法則)。社内で人材不足の場合は社外から人材を調達する
D 業務はポストの上位者からの業務指示書(Job Description)によって行われる
E 下位者は指示書にしたがって、業務を遂行し、その責任を全うすることで評価される。成果が指示に対し不足の場合は昇格することも給料も上がらない。
F 企業は通常繰り返し作業が多く、繰り返し作業を細分化し、最下層の作業は単純化、専門化、標準化が行われ、生産性の向上に寄与する。
G 標準化は通常国レベル、業界レベルが存在し、企業はそのスタンダードを採用して業務を遂行している。
H 国や業界レベルの標準には資格制度があり、通常個人は自分のプロフェッショナルに必要な資格を個人の費用出で取得している
I 企業はそのスタンダードを採用することにより、市場に多く存在する資格者を、必要なときに雇用することができる。個人は採用時点で資格者としての報酬を得られる
J 国際、国、業界レベルの標準は社会の変化を受け入れて、常時改定が行われる。企業は手間の掛かるフォローアップの負担なしにスタンダードを採用できる。これは社会の変化を取り入れた、スタンダードを常時利用できることを意味する。
K 企業は採用者がすばやく業務を遂行できるために、作業に必要なマニュアル、プラクティス等を準備する
L 基本的に個人の学習は個人の負担で行う。各種資格も個人で取得する。資格者は採用された時点で、資格に見合った、報酬を受けることができる

日米企業と社会の標準化に対する相違

図は日米企業と社会の標準化に対する相違を示したものである。
この図の日米の相違は次回に説明する。
以上
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