PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (22) 
「国内プロジェクトと海外プロジェクトの主な相違点を学ぼう」 (1)

芝 安曇:1月号

 前回は国内向けプロジェクトのマネジャーも国際的に通用するビジネス習慣を学びましょうという記事を書いた。実は19回〜21回までは国内プロジェクトと海外プロジェクトの相違の部分的な話と国内プロジェクトは海外プロジェクトに比較して変更や残業が多い。そこで「国内プロジェクトマネジャーも国際的に通用するビジネス習慣を学びましょう」を書いた。今回はまとめとして「国内プロジェクトと海外プロジェクトの大きな相違点を学ぼう」とした。

1. 国内プロジェクトと海外プロジェクトの主な相違点
国内プロジェクトを担当しているマネジャーと海外大型プロジェクトのマネジャーはプロジェクトの背景の相違から行動の違いがあるが、経験してみないとその相違が理解できない。海外プロジェクトを始めて経験する人たちが増える昨今である、この違いを理解しておく必要がある。
 1)顧客の発想が違う
 @ 契約の概念が違う
  ・ 契約がビジネスのスタート(欧米)
  ・ 発注者と受注者は対等
  ・ 日本は曖昧で、発注者有利にできている
 A 文化が違う
   ・性善説(リスクマネジメントに弱い)と性悪説(リスクマネジメントに精通)
   ・Simple is the best. (欧米)
   ・タテマエとホンネの落差(日本)
   ・コミュニケーションの仕方:低コンテキスト(欧米)、高コンテキスト(日本)
 2)企業は組織なり(欧米)と企業は人なり(日本)
 @人材育成より組織能力育成(米国)、組織能力より人材育成(日本)
 A社会的なスタンダード重視(欧米)
 B マネジメントの発想(日本は狭義に捉えている)

2.相違点をどのように理解するか
 1)顧客の発想が違う
 @ 契約の概念が違う
契約がビジネスのスタート(欧米):欧米は契約書が発行されないと仕事を始めない。このごく一般的な概念が日本では通用しない。長年の信頼関係で進めるという発想である。仕事を最初に明確にしないで、進めることは結局トラブル発生の確率が高くなり、必要のない仕事が増えるだけである。そろそろこの習慣は止めた方がよいと思う。
発注者と受注者は対等:発注者は発注者としての(或いは発注者しかできない)役割と責任がある。受注者は受注者としての(或いは受注者しかできない)役割と責任がある。契約は双方とも対等である。(欧米):近年は技術やITツール等の進歩で、発注者と受注者はお互いが持つ力を結集して成果を上げることの必要性を双方が理解し、Win/Winの関係性確立を目指すようになった。
日本は曖昧で、発注者有利にできている:日本方式は見かけ上は発注者有利に展開しているように見えるが、構想段階で適切な検討をしないで進めたプロダクトは品質での低下が見られ、運用経費がかかり、生涯コスト(プロジェクトのライフサイクル・コスト)が高くなり、長期的には損をした計算になる。
2) 文化が違う
性善説(リスクマネジメントに弱い)と性悪説(リスクマネジメントに精通):
性悪説とは人間の本質に性悪的なものがあることを認めて、トラブルが起こらないように用心してビジネスを進めましょうという発想である。ここではリスクマネジメントの必要性が強調されている。このことは国際間の取り決めとして重要なことである。同時に国内プロジェクトにおいてもリスクマネジメントを実施する習慣をつけることは、双方にとってトラブルの発生を防ぐことになり望ましいことである。
Simple is the best. (欧米):無駄を省き、シンプルなことは品質的にも、効率的にも望ましいことである。
タテマエとホンネの落差(日本):国内ITプロジェクトを見ると、契約、仕様の曖昧さ、変更の多さ等で失敗率が高く、タテマエ上はPMOやCIOを置いているが機能していない。表面上は実施した形になっているが、実質的には機能していない等タテマエとホンネの落差が大きくなっている。オフショアとう海外への発注で問題も多く発生している。改める時期に来ている。
海外プロジェクトにおいては契約を守ることにより、タテマエとホンネの落差が少ない。この落差を少なくするのがプロジェクトマネジャーのマネジメント能力である。
2) 企業は組織なり(欧米)、企業は人なり(日本)については次回にする。
以上
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