P2M研究会
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「やれる所から実施しようから、必要なことを実施しようへの転換」

P2M研究会 渡辺 貢成:1月号

 新年にあたって、東京P2M研究会の活動とその抱負について一言のべる。世界的規模の不景気に遭遇し、日本が一番大きなダメージを受けている。原因を調べると、日本は簡単にやれるところを中心に経営を進めていることがわかってきた。気が付いてみたら、日本には飛行機の飛ばない空港がたくさんできたが、ハブ空港がないので韓国のハブ空港を利用させてもらっている。日本には港をたくさん建設したが、コンテナ船ハブ港は韓国の釜山港を利用させてもらっている。全国に車の走行の少ない道路をたくさん建設しているが、都会の混雑を解消する道路は建設されない。

 インターネットの普及に従い、社会の変化のスピードが増し、社会の不確実性が大きくなってきた。このためのリスク対策が叫ばれる中で、具体的に何をしてきたかと考えると、頭の中だけで大変だと叫びながら、体は何もしていなかったことに最近多くの人々が気が付き始めた。

 IT産業も同様で、実のところ、これではまずいと気が付き始めた。構想計画(超上流)をしなくとも、ソリューションパッケイジの導入で成果が出せると信じてIT化が実施されてきた。これも空港と同じで、システムさえ入れれば役に立つと単純に信じて、どのような成果を出すかということに関心が薄い。「仏つくって魂入れず」である。
 求める成果を出したいなら、業務をどのように変え、システム化で何を期待するのかという構想を練ることが最も大切である。構想計画を練ることは未来の社会変化を想定し、その未来目標に向かってプロジェクトを進めることである。投資とは未来への投資であるが、現在のIT投資は今日のための投資をしているに過ぎない。

 構想計画を必要としないIT業界のPMはPMBOKで十分だということで、P2Mは見向きもされなかったが、昨年の後半から流れが変わってきた。大阪人は変化への動きが早い。IT企業のユーザー会(発注者)からプログラムマネジメントの講演依頼があった。プログラムマネジメントはIT業界では人気がないだろうと思っていたが、140名強の受講者があり、びっくりした。3時間の講演は好評で、講演は面白く役に立った。時間が少なく、さらに詳しく聞きたいというものであった。

 この結果は従来どおりの仕事のやり方をしていたのでは、自分たちが駄目になるという危機感の表れであった気がする。

 幸いなことに、経済産業省、IPA(情報処理推進機構),JUAS(日本情報システムユーザー協会)が、「超上流」、「業務の見える化」、「CIOを機能させるための委員会」、その他新たな展開があり、P2Mに対する関心が徐々に増えてきた。

 P2Mが2001年に発表されて、英国、フランスはいち早く大学院で取り入れられ、ウクライナではP2Mガイドブックのロシア語版が出版され、本年にPMS資格試験が実施されている。何故海外がP2Mを評価しているかをお知らせする。
@ 今までオーナー(発注者)のためのプロジェクトマネジメント(PM)がなかった
A 現在の複雑化された社会では単純に1プロジェクトで処理できるものは少なく、プロジェクトの複合体として処理することで大きな価値を高めることができる
B すべてのプロジェクト(投資)はチャンスと危険の攻めあいの中で成立する。プログラムト、プロジェクトの関係性の中で投資案件がプロジェクト統合することで従来にない価値を生み出す
C 曖昧な性格のプログラムと、正確な目標に向かってまい進するプロジェクトの総合マネジメントによって価値をつくり上げ、不確実性への吸収は、プログラムのあいまい性の中で処理しようというユニークなアーキテクチャ(設計思想)が現代的な価値を生み出している。

これらの利点が評価されての採用である。

P2M研究会は利点だけを述べても、実践的な成果を出さないことには評価されない。現在日本企業が行き詰まっているのは、マーケット別の戦略立案が十分なされていないからだと推察する。マーケットを分類して対策を練る。
@ 未来の日本マーケット
A 競争激化する先進国間のマーケット
B 中国、インド、韓国、ブラジル等中進国戦略
C 発展途上国
上記のマーケットに対する各企業の戦略は現在と大きく異なる。きめの細かな戦略・戦術が求められている。ものづくり/技術という単純な戦法からの脱皮で日本は益々発展できる基盤がある。東京P2M研究会は国際P2M学会の研究会に参画して、実践的な研究分野で活躍していきたい。
以上
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